このシリーズは数年前に話題になり、今もまさに二期が放送中である話題沸騰中の作品だ。

 

池井戸潤 「半沢直樹 おれたちバブル入行組

この作品は数年前にとても話題になった半沢直樹シリーズの第一作目である。話題になっていた当時ドラマがあっていたが数話だけしか見てなかったので、改めて読んでみようと思った。話は銀行員になった主人公の半沢が取引先・上司に嵌められる寸前までいったが執念深く反撃の準備をし続け、最後は見事逆転し自分は上の階級に上り詰めたというものだ。半沢が虐げられながらも反逆するさま、敵役の取引先・上司は絵にかいたような外道がすごくハマっていた。それ故に最後逆転するところはとても痛快だった。思わず読み終わった直後に本屋へ直行し続編3冊をいっぺんに買ったぐらいだ。

 

「おれたち花のバブル組」

この作品は半沢直樹シリーズの第二作目である。話は大赤字を出したホテル会社の立て直し、金融庁との対決、上司の不正などまた色んな闘いが繰り広げられた。印象に残ったのは半沢の動機である近藤が立ち直り、自分の会社の腐った上司を蹴散らしていく姿だ。これを読んでいると銀行はどこまで腐った組織なのかと失望させられる。と同時に社会のどの職場もこんな感じではないのかという不安も駆り立てられる。僕は昔から大人が大嫌いだった。筋の通らない頭ごなしに否定する大人が嫌いでしょうがなかった。それは間違っていないとこの本を読んで思った。だからこの本はそんな大人たちに不満を抱く青年、社会人に向けて書いているのかもしれない。

 

「ロスジェネの逆襲」

話は、東京セントラル証券へと出向させられた半沢にとあるIT企業買収案件が下りてきた。だが出向元である中央銀行にその案件を横取りされ、その裏にある陰謀を暴くというものだ。正直2巻の大和田を退け、興奮状態にあった読者にとっては少し物足りなさを感じるかもしれない。だが新たな職場へ就き、自分と同じような思想の部下を率いて奮闘する半沢はやはり痛快でかっこいい。バブル崩壊後の就職氷河期を乗り越えてきたロスジェネ世代の気持ちと、バブル世代の団塊の世代への不満も描かれており、世代ごとに様々な思いがあるのだと改めて感じた。現在団塊の世代は高齢者となり、年金という形で税金を食いつぶしている奴らだが、バブル世代も上の立場でふんぞり返っている奴らだ。これから社会に出ていくうえでこいつらのもとで働くことは少しも不満がないといえば嘘になる。元来僕は大人が嫌いなので就職してもあまり上の世代と衝突がないように気を付けたい。

 

「銀翼のイカロス」

これは半沢直樹シリーズ4作品目となるが、その集大成といえるほどめちゃくちゃ面白かった。話は銀行に復帰した半沢が、航空会社の再建計画を巡って今度は政府と闘うというなんともスケールアップしたものだ。政府と銀行との癒着、政府が企業を政治利用すること、銀行内の派閥争い、銀行頭首の決断など興奮させる要素ばかりだ。特に旧Tと旧Sの派閥争いの経緯、それに対する頭首の思いを吐露する場面は熱かった。頭首や半沢のような自分の信念を貫ける大人に僕はなりたい。次に政府と企業の癒着に着目しよう。政治家や国家は、僕は全貌を知らないが恐らく現実でも相当な癒着があるだろう。その証拠に現在国はコロナ流行に見舞われている。今まさに第二波が来つつある状態だ。この状況で国はあろうことか「Go toキャンペーン」という簡単に言うと旅行を援助しますよーといった政策を打ち出している。首都では感染者が増え続けているし各地でもちらほらまた出てきている中でこの政策はおかしいと僕は思う。極端な話だが、ブラジルはコロナに対して明確な対策を講じず、経済を優先させたために大多数が感染し、結果として経済が回らなくなったといった現状だ。自粛での経済の落ち込みは一時的なものだが、感染・死亡での経済の落ち込みは長期的、大打撃となるだろう。政府に対する企業からの圧力は確かに強いかもしれないが、この時期だからこそ踏ん張って欲しかった。だいぶ脱線してしまったが、これからも日本の情勢に注目していきたい。

シェイクスピア 「タイタス・アンドロニカス」

この本は、サイコパスというアニメで引用されており、ずっと読みたかった本でもあった。内容は、ローマとゴートの対立にタイタスとその娘、息子たちが巻き込まれてしまうという話だ。ゴート側の女王タモーラとその息子たちが、ローマと表面上は和平を結んでおきながら、悪巧みを画策していく。それはローマ側の将軍タイタスとその子供たちを嵌めようというものだった。

印象的なのは、ある日の狩りの時だ。タイタスは「さあ狩りが始まるぞ。しらじら明けの朝、野原はかぐわしく香り、森の緑は濃い。ここで猟犬を解き放ち、声高く吠えさせて・・・」と言っている。このセリフは、後の悲劇を暗示しているようだった。裏ではタモーラの息子たちが、タイタスの娘ラヴィニアを凌辱しようと企てる。ラヴィニアは目論見通り凌辱されてしまう。そのうえ両腕を切断され、喋れないように舌を切られてしまう。悲惨な姿の娘を見たタイタスは、深く悲しみ絶望してしまう。そして最後には、「その姿をさらして悲しみを日々新たにさせてはなるまい」といい自らの手でラヴィニアを殺してしまうのだった。といった感じでタイタス・アンドロニカスは衝撃の作品である。理不尽で不条理な暴力、繰り返される悲劇、悪役のイカれた台詞などシェイクスピアが描く悲劇の中でも特に残酷だ。だがその残酷性ゆえにとても面白いとも思った。ただこんなむごいものは劇では見たくはないとも思った。

そしてこの作品はもう一つ印象的な要素がある。ローマとゴート、女王と国王、本音と建て前、暴力と非暴力、罵倒と沈黙など数多くの二項対立がなされている。これほどまでにはっきりと二項対立を描く作品もなかなかない。そういった意味でもタイタス・アンドロニカスは衝撃の作品だった。

 

ラッセル 「幸福論」

この本は、不幸とは何か、それに陥る考え方、幸福とは何か、それへの考え方、愛情とは、家族とはといった僕たちの身の回りのことについて疑問を投げかけ、これからの人生を見つめなおす機会となった本だった。大雑把に言うと結論は、「生きていく中で自分の内にばかり目を向けるのではなく、外の世界へ目を向け、興味を持ち、視野を広げよう」といった感じだった。趣味も自分の根幹にある大事な趣味だけでなく、いろいろなことに挑戦し、いくつかの趣味を持ったほうが良いとされている。実際僕も、少し前まではゲームが主な趣味だったが、サイクリングやカフェ巡り、読書も趣味にしたことでより一層楽しいと思えるようになったと思う。暇な時間が全然なく、むしろ時間が足りないくらいだ。何事も楽しむことが一番大切だと思うので、勉強は楽しくないけど、その息抜きとしてこれからも趣味を全力で楽しみたい。心に残ったのは、「退屈の反対は快楽ではない。興奮である。」という文だ。確かに仕事や学校の行帰りの毎日は退屈そのものだが、何か日々を分け隔てる出来事があれば人は退屈だとは思わない。だがその出来事は受動的にはそう起こってはくれない。そういった意味でも能動的に外の世界に関心を向けることを意識しようと思う。

 

柳広司 「ジョーカーゲーム」

この作品は、国家機密組織としてスパイ機関が発足され、その中でのスパイ養成、実際のスパイ行為を書いている。僕のスパイのイメージは、秘密裏に情報を集め暗殺していくというものだったが、この本でのスパイで最もやってはいけないことは殺人と自殺だといっている。理由は人が死ねば少なからず周りの注目を集める事であって、秘密裏に暗躍するスパイが注目を集めることはナンセンスだからだと書いている。スパイは男子が憧れる中二病的な存在であってこの言葉は興奮した。加えて文中で「肩書にとらわれず、現実をしっかり見て己の意思で行動しろ」といった感じの言葉があり、教訓になるなとも思った。スパイ✖ミステリーな本は新しいと思ったし面白かったので続刊もぜひ読んでみたい。

 

中村文則 「教団Ⅹ」

この作品は、多くのジャンルを内包しているものだった。珍しい作品だ。宗教云々の話かと思いきや性描写、量子力学、相対性理論、社会風刺と様々なジャンルがこの作品には詰め込まれている。特に性描写は多すぎて「官能小説を読んでいるのかおれは」と思えるほどだ。この作品から得られたことは、人の承認欲求はいかに厄介なものなのか、マスメディアや政府がどれだけ腐っているかを改めて感じさせられた。人の承認欲求は、そう簡単に抑えられるわけでもなく、満たされるわけでもない。僕がブログを書こうと思った理由の一部も承認欲求だと思っている。実に厄介な欲求だ。政府の腐敗については、正直政治にはあまり興味がなく、どうせ誰がやっても腐っていく一方だろと思っていた。だが投票率が低下している今日であるからこそ根回しなどでの票調節でゴミが当選するより、ちゃんと自分で自らの意思でだれに投票するか決めることが大事だと思った。

 

 

有川浩 「クジラの彼」

この作品はラブコメの短編集だ。恋愛・青春小説はあまり読んでこなかったし、そういう経験にも疎いので新鮮な気持ちで読めた。だが普段ミステリーSF好きとしては少し物足りなさも感じた。話は全て自衛隊対ほかの職種等での恋愛模様を描いている。特に海軍は、海に出ることが多くどうしても遠距離かつまともに連絡も取れないとても厳しい恋愛になる。その中でも待ち続ける者、他に目移りしてしまった者と両者が描かれている。僕がその状況になったとしても、なお関係が続いてほしいと理想を掲げると思う。だが現実は厳しい。

やっぱり恋愛は難しい。

 

有川浩 「明日の子供たち」

この本は1,2年位前に読んで忘れているところもあると思うが有川浩つながりで書いてみる。この作品はノンフィクションで児童養護施設の先生、子供たち両者の様々な葛藤を描いている。当事者である自分たちと部外者である周りの人たちとの思いの差も明確にされており、ただかわいそうと哀れみ嘆く人が本当の意味で当事者に寄り添った考えをしていないことを指摘していた。子供つながりで僕は塾のバイトをしており、いろいろな子供に触れる機会がある。子供には個性がありみんなそれぞれ可愛いと思う時がある。男性にも母性があるのかどうか分からないが、この感性は大事にしようと思う。

 

百田尚樹 「海賊と呼ばれた男」

この作品は、出光が戦前、戦中、戦後どのような道を辿ってきたかを書いている。石油がまだ普及していない時代で将来自動車が当たり前になってくると読んで出光を創業した。だが石油業者界はいばらの道でいろんな企業から敵視され、嵌められようとも社員たちを信じてのし上がっていくといった話だ。いろいろな場面があるが一番心に残ったのは、満州で石油を売ろうとしたときの場面だ。諸外国も満州を狙っており、そこでの対立、打ち出した秘策、そして見事勝ち取るさまは読んでいて面白かった。作中社長は、絶対に解雇せず社員を信じて、社員もそれにこたえるという絶対的な信頼関係が出来ていた。利益を求めるのが普通な社会でこれほど義理人情に厚い会社もなかなかないだろう。著者の作品である「永遠のゼロ」は映画で見て面白かったので、他の作品もさらに読んでみたい。