シェイクスピア 「タイタス・アンドロニカス」

この本は、サイコパスというアニメで引用されており、ずっと読みたかった本でもあった。内容は、ローマとゴートの対立にタイタスとその娘、息子たちが巻き込まれてしまうという話だ。ゴート側の女王タモーラとその息子たちが、ローマと表面上は和平を結んでおきながら、悪巧みを画策していく。それはローマ側の将軍タイタスとその子供たちを嵌めようというものだった。

印象的なのは、ある日の狩りの時だ。タイタスは「さあ狩りが始まるぞ。しらじら明けの朝、野原はかぐわしく香り、森の緑は濃い。ここで猟犬を解き放ち、声高く吠えさせて・・・」と言っている。このセリフは、後の悲劇を暗示しているようだった。裏ではタモーラの息子たちが、タイタスの娘ラヴィニアを凌辱しようと企てる。ラヴィニアは目論見通り凌辱されてしまう。そのうえ両腕を切断され、喋れないように舌を切られてしまう。悲惨な姿の娘を見たタイタスは、深く悲しみ絶望してしまう。そして最後には、「その姿をさらして悲しみを日々新たにさせてはなるまい」といい自らの手でラヴィニアを殺してしまうのだった。といった感じでタイタス・アンドロニカスは衝撃の作品である。理不尽で不条理な暴力、繰り返される悲劇、悪役のイカれた台詞などシェイクスピアが描く悲劇の中でも特に残酷だ。だがその残酷性ゆえにとても面白いとも思った。ただこんなむごいものは劇では見たくはないとも思った。

そしてこの作品はもう一つ印象的な要素がある。ローマとゴート、女王と国王、本音と建て前、暴力と非暴力、罵倒と沈黙など数多くの二項対立がなされている。これほどまでにはっきりと二項対立を描く作品もなかなかない。そういった意味でもタイタス・アンドロニカスは衝撃の作品だった。

 

ラッセル 「幸福論」

この本は、不幸とは何か、それに陥る考え方、幸福とは何か、それへの考え方、愛情とは、家族とはといった僕たちの身の回りのことについて疑問を投げかけ、これからの人生を見つめなおす機会となった本だった。大雑把に言うと結論は、「生きていく中で自分の内にばかり目を向けるのではなく、外の世界へ目を向け、興味を持ち、視野を広げよう」といった感じだった。趣味も自分の根幹にある大事な趣味だけでなく、いろいろなことに挑戦し、いくつかの趣味を持ったほうが良いとされている。実際僕も、少し前まではゲームが主な趣味だったが、サイクリングやカフェ巡り、読書も趣味にしたことでより一層楽しいと思えるようになったと思う。暇な時間が全然なく、むしろ時間が足りないくらいだ。何事も楽しむことが一番大切だと思うので、勉強は楽しくないけど、その息抜きとしてこれからも趣味を全力で楽しみたい。心に残ったのは、「退屈の反対は快楽ではない。興奮である。」という文だ。確かに仕事や学校の行帰りの毎日は退屈そのものだが、何か日々を分け隔てる出来事があれば人は退屈だとは思わない。だがその出来事は受動的にはそう起こってはくれない。そういった意味でも能動的に外の世界に関心を向けることを意識しようと思う。

 

柳広司 「ジョーカーゲーム」

この作品は、国家機密組織としてスパイ機関が発足され、その中でのスパイ養成、実際のスパイ行為を書いている。僕のスパイのイメージは、秘密裏に情報を集め暗殺していくというものだったが、この本でのスパイで最もやってはいけないことは殺人と自殺だといっている。理由は人が死ねば少なからず周りの注目を集める事であって、秘密裏に暗躍するスパイが注目を集めることはナンセンスだからだと書いている。スパイは男子が憧れる中二病的な存在であってこの言葉は興奮した。加えて文中で「肩書にとらわれず、現実をしっかり見て己の意思で行動しろ」といった感じの言葉があり、教訓になるなとも思った。スパイ✖ミステリーな本は新しいと思ったし面白かったので続刊もぜひ読んでみたい。