
梅は咲いたが鬱々として愉しまず春まだ遠し。
こんな日は炬燵で酒を呑んで昔話でも語るに限る。
えー、でもそんな話知りません。
年寄りは昔話の十や二十か語れなければ甲斐がない。
昔々あるところに民青と革マルがいましたとさ。
そんな話だれも聞きたくはなかろう。
おれたちの血であがなった昔話は、どうなる。
おれたちの知と無知はどう清算されるんだろう。
<世間知>なぞはなまじ知らんほうがいい、
というおれたちの特権は、どんな富を構築したんだろうか。
稚拙だろうが、まぼろしであったはずはない。
死ぬ前に、<総括>してしまいたいものである。
赤の他人がしてくれるんだろうがね。