
村上春樹『スプートニクの恋人』
これは同僚氏が読んでたもので、ひとが読んでるとそれは面白いに違いないとつい思ってしまいまして、ブックオフで400円だったものを200円で譲ってもらいました。
《22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまで叩きつぶした。》
以上は冒頭。カバーの裏表紙にはこれが引用され、続いて「――そんなとても奇妙な、この世のものとは思えないラブ・ストーリー!!」とキャッチコピーが記されている。
《「元気?」
「元気だよ。春先のモルダウ河みたいに」》
なんておしゃれなんだ。知的な会話ってこんなんだ。
ひとを見てくれだけで判断してはいけない。
裏に潜む本体を見定めねばならない。
文体如き上っ面で判断せず、ノーベル賞候補作家に押し上げる読者の圧力にまで思いを致すことができなければ、なんにも読んだことにならないのである。
いやーまことにどうも。
どうせ田舎の田吾作、文学なんぞ高尚なものおれが分かるわけはないのである。
「面白い」か「そうでもない」か、何を読んでもたった二色に分けてしまう。深みや陰影がこんなやつに分かるもんか。
それにしても村上春樹さんはこんな素っとん狂な設定をする作家だったのか? 知らんけど。