早く来てくれよー、秋。頼むよ~、
と、心底思っていても、
いきなり秋風が吹き始めると、まーちがいない!惜しくなるのが夏。



草や虫など、生命力が一番旺盛なのも、夏。



「思い出」という言葉で呼び起こされるのも、不思議に、夏。



「思い出」は、たぶん夏の季語(いや、これは、ちょっと、うそ)。
井上陽水だったら、「その通り!」と賛同してくれる、
と思いますけど。



ちなみに、ヤフーで「季語 夏 思い出」で検索しましたら、
たまげました。なんと、5618件、ですと。



わたしの説もあながち、「大ウソ」ではない、と思えます。



♪夏が来れば思い出す、遥かな尾瀬なんとかかんとか。
という歌もあります。



中原中也の『初夏の夜』では、
 うれしいことも、あったのですが、
 回想されては、すべてがかなしい 
また曰く、
 過ぎし夏よ、島の夜々よ、
 おまへは一種の血みどろな思い出
  (『夏過(あ)けて、友よ、秋とはなりました』)
とも。



調べればいっぱい出てくるはずです。
思い出=夏、と、わたくし断言いたします。



生命力の旺盛な時とは、
生命にとって天国であるという意味にはなりません。
別の生命の餌食になるという過酷な時期で、
生命の危機の季節でもあるのです。



人を殺すのなんかヘッチャラな兵士でも、
自分の生命が危機にさらされた時は、びびりまくるように、
動植物にとっては自然過程として甘受できることが、
人間には、トラウマにもなります。



中也の夏は、甘美な思い出ばかりではなかった。
むしろ、逆だった。
そして、日本人にとっても、敗戦という大きな<難関>の季節でした。
「夏」は日本人のトラウマと申せましょう。



因果なことに、その夏は毎年やってきます。
夏をどう越せばいいのか?
戦中・戦後派世代は(それなりに、か、必死にか)考えて来ました。
彼らが霧の彼方に消え去るまで、傷跡は残る(べき)でしょう。



敗戦処理はちゃんとしてから、死んでくれよ!
8月は残酷な月、ではあります。



あ、あ、あ、台風16号、すごいです!
安普請の二階、揺れてます。
船酔いしています。
生きておれば、また会うこともあるでしょう。
アーメン。  2004.8.30