1985年11月16日、ベ平連は「ニューヨークタイムズ」に『殺すな』
の反ベトナム戦争の広告を出した。
広告という商業メディアを介した「反体制」は、全く新しかった。
「新左翼」諸君は、ちゃんちゃらおかしいと思ったかもしれない。
「石を投げる代わりに、花を投げましょうよ」
というヒッピーらのフラワー・ムーブメントと同様に。
ベ平連のこの趣向は、反「ベトナム戦争」運動の実効性の面では
血の汗流す新左翼を凌駕していた。
「ベトナムに民主主義を!」と身を挺していた正義のアメリカ国民
に、”Stay Cool”(『ウェスト・サイド物語』挿入歌)を告げた
すぐれたCMとして名を残すべきものです。
「正義に酔う」クセのあるアメリカの人には、
程をわきまえたクール・ミント剤になりました。
ベ平連に言わせると、新左翼は「ガキ」、だったのでしょう。
このあたりの参謀は、小田実、開高健、鶴見俊輔ではなく、
吉川勇一だったのかも。
ベ平連が今も活動を継続しているかどうかは知りません。
活動していたら、当然、「虐待死」や「親殺し」に対して、
『殺すな』のCMを出すでしょう。