安楽椅子探偵ON STAGE、解決編見ました。推理を楽しむ1週間で、ぜひともまた続編を制作してほしいものだ、と切に願います。
真相がわかったうえで、まだ違う推理をしたくなるのがミステリファンの性(さが)、というもので、今回犯人探しの応募はしなかったんですが、別の推理をたててみることにしました。
解決編でなされたエレガントな推理は、エレガントではあるけれど、論理的かというと必ずしもそうではありません。
1.安楽椅子をペンキで汚したトリックは、解決編で語られたトリック以外にありえないのか。
このトリックから、それをすることができた人物を絞り込んでいますが、たとえば、ペンキの入ったグラスの下にドライアイスを仕掛けるのでなく、ドライアイスで作ったフタをしたグラスを最初からひっくりかえしておく、というトリックも出来ますし、ペンキ自体をドライアイスでかたまらせておいて、ひっくりかえしておき、溶けるにしたがって椅子を汚す、ということも可能。
こうした別のトリックを使えば、段差で衝撃があろうと椅子を汚すおそれもないのです。
さらに言えば、犯人はそんな段差のことなど知らないか、うっかりしていて、解決編で示されたトリックを仕掛け、たまたまグラスはひっくり返らなかったのかもしれません。
そうなると、トリックを仕掛ける時間は特定されない、ということになるのです。
2.資料室のコンセントを抜いたのは、掃除機以外に考えられないのか。
掃除機を使うためにコンセントを抜いた、というのはエレガントですが、スマホの充電が切れたので、コンセントを使いたかったのかもしれません。なぜ、わざわざその場でスマホの充電をしたのか、という謎は、なぜその場で掃除機を使わねばならなかったのか、という謎と同等で、どちらが妥当性があるかは、その解釈にかかっているだけです。
また、犯人はコードレスの掃除機があることを、コンセント抜いたあとに思い出したのかもしれません。突発的なことだったので、つい、昨日までは無かったコードレス掃除機の存在を真っ先に思い浮かべなかった可能性もあります。
そうなると、コードレス掃除機の存在を知っているかどうかによって犯人を絞り込むことはできない、ということになるのです。
と、いうわけで、犯人は、安楽椅子探偵オタクの清水真人。
清水は贋の安楽椅子探偵(楽太)の存在を消すために、ステージ上での安楽椅子探偵の殺害を思い立ちました。(なぜステージで殺したのか、という論点は解決編でも触れられており、ここがポイントです)
安楽椅子に毒針を仕掛けるため近づくことができたのは、劇団員、スタッフに絞り込まれますが、清水がたとえば安楽椅子探偵の仮面と衣装をつけてうろうろしていたら、劇場のなかにいることも、椅子に接近することも可能です。清水は安楽椅子探偵オタクなので、仮面や衣装などを持っていても不思議ではありません。
ステージ本番、マントや体ですっかり隠されていた安楽椅子を清水は「昨日まで使われていた椅子と違う」とつぶやくことが出来ました。椅子が違うものに変えられたことを事前に知っているものでなければ不可能です。清水は事前に椅子のことを知っていたのです。
椅子を汚すトリックは、ドライアイスを使ったものと考えられますが、その方法についてはいろいろあり、どれを使ってもさしつかえありません。
清水は、安夫とは同性愛の関係でした。(解決編では、別の人物との関係が明かされましたが、問題編ではそれを裏付ける証拠がないことについては同等です)
安夫は愛する清水のために、事務所の鍵の場所など便宜をはかってやっていました。
そして、資料室での逢引の際、安楽椅子探偵オタクの清水は資料室においてあるものをスマホで撮影していましたが、充電がなくなり、コンセントを使いました。
安夫との2ショットを撮りたかったのかもしれません。
資料室で見つけた安楽椅子探偵像がどうしてもほしくて手にしているとき、楽太が入ってきたため、もみあいになって、とうとう殺してしまいます。
そのあと、安夫が入ってきて、事態を知り、楽太のネックレスを取って、自分が安楽椅子探偵としてステージに立つことを決心します。
もともと、劇団員には内緒で安夫は楽太とはダブルキャストで安楽椅子探偵を演じていました。清水は愛する安夫こそ安楽椅子探偵にふさわしいと思っており、千秋楽まで安楽椅子探偵を殺さなかったのは、それまでの安楽椅子探偵のキャストを安夫が演じていたからです。
もみあいの際、ネックレスが切れてしまった、というのはエレガントな推理ですが、論理的な証拠はありません。植木鉢の中で光っていたものも、ネックレスの玉ではなく、単なるパチンコの玉だったのです。
安夫が楽太の死を糊塗したのは、なぜ清水を資料室に手引きしたのかを説明するのがいやだったからです。みんなから「おまえ、あのハゲのオタクとどういう関係なんだ」とツッコまれるのが目にみえていたからです。
ただし、そのとき、安夫は、清水とはもう別れる、と告げます。
ショックを受けた清水は、安楽椅子に仕掛けた毒針(本来は贋の安楽椅子探偵、楽太を殺すためのもの)のことを安夫には教えませんでした。
自分をふった安夫なんか死んでしまえ、と怒っていたのです。
1.清水真人は、安楽椅子探偵の仮面や、同性愛相手の安夫の手引きにより、劇場や事務所に自由に出入りすることができた。
2.清水真人は、安楽椅子探偵オタクだったので、重い安楽椅子探偵像を抱きかかえており、楽太殺害のときに使用してしまった。
3.清水真人は、ふだん手袋をしている安楽椅子探偵の手形をもっており、これこそ本物の安楽椅子探偵の手形だと言っていました。安楽椅子探偵にふさわしい、と思っていた同性愛相手の安夫と裸のつきあいをしていた証拠です。
4.清水が安楽椅子探偵にこれほどまでにハマっているのは、ほかでもありません。清水は天王寺満斗の異母妹だったのです。満斗(マント)と真人(マト)の兄妹でした。
真人は性転換し、男になりましたが、解決編で語られた、犯人の安楽椅子探偵に対する恨みをそのまんま真人は感じていたのです。
5.さらに作者は、真犯人が清水真人だということをこっそりほのめかしていました。半券に記された「真人」の名前。真「半」人こそ、真犯人の清水だっというわけです。
おわかりかな?
いいや、わからん。
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