坂本龍~今夜は泡風呂ぐ~

坂本龍~今夜は泡風呂ぐ~

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今年の春からDTMを用いた
作曲レッスンなるものをしている。


僕もプロなので、初心者〜中級者くらいの
方には、それなりの指導が出来るという自負がある。


いやはやしかし、いざ
教えるとなるといちいち言語化するのが難しい。
もっと頑張らねばという気概のもと、
その日もレッスンのため我が事務所へ向かった。


5月って普通にあっち〜などと思う傍ら、
やっと事務所に着いたその瞬間に
自分が犯した最大の過ちに気付いた。







PCを自宅に忘れた。








PCって、知ってます?


そう、パーソナルコンピューター。


通称パソコンという名で知られる、
超便利な、機械です。


そしてDTMというのはですね、
デスクトップミュージックの略なんですわ。

デスクトップなんて小洒落た単語が
入っちゃってるんですわ。


それはそれはもう、
パソコンが無いと成立のしない、
かなり密接した関係なのです。

競馬にとっての馬、
オセロにとっての盤、
田舎にとってのクソデカイオン、


そんな感じなのです。




そして瞬時にしてよぎる、
家に取りに帰る以外の怠惰な選択肢。


・PC無しでも教えられるのでは、、?


そうです。当然生徒の方はPCを持ってくるのです。つまり僕は口頭で作曲作法を伝え、それをその通り生徒さんは己のPCで実践してもらえれば、
それもそれで列記とした授業です。
しかし、例えばそれが1回目の授業だとしたら、
『この方は口頭スタイルなんだな』と
ストロングスタイルで相手を押し切る事が可能ですが、3回目なんです。
3回目にして急に手ぶらの講師ときたら、
それはもうかなりの違和感と不信感と世界観を
生み出すに違いありません。
そのあまりの世界観に耐えかねた生徒から
もしかして忘れました?などと疑いをかけられようものなら、
食い気味で『はい?なんですか?』と
高圧的な態度で黙らすしかないのです。
そんな最悪な空気では、授業どころではありません。というか、シンプルに講師失格ですよね。
シン失です。



・事務所にある段ボールや余分なプラスチックで、なんとかPCっぽいものを作る


やはりPCが必要と来たらば、本物のPCでなくとも、例えそれがガラクタであってもさっきあげたケースよりかはマシな形で落ち着く気がします。
うちの事務所は結構DIYなところがあり、段ボールであったりなんか色々あったりするんですが
、それらを駆使して、見てくれだけはなんとかPCっぽいものを作り、決して画面は見せずに『ちゃんとPC使ってる風』を装いやり倒す。
しかし僕が使っているのはApple製品のMacで、
即興で作られたガラクタ偽物PCとの
あまりの落差からはたまた違和感と不信感と不快感とその他全ての感を覚えた生徒から
『え、それ、、なんですかそれ!?』
と聞かれたら
『よそ見してる場合じゃないでしょう。講師である私のPCに興味を持つ暇などありません。』
と、最上級のモラハラを部屋中に充満させるしかないのです。
即興で作られた動きもしないPCのような
何かを所持している変な人間が、
あろう事かちゃんと授業を受けに来ている人に
モラルハラスメントを行うなんてのは、
100000000対0でこちら側がキモいし
終わり中の終わりなので、
やはりこれも悪手なようです。


・買う


家にPCを取りに帰り、また事務所に到着するのに要する時間は、およそ1時間半程。
だったら、難波にある家電量販店で
新しいPCを買えば、ギリ間に合うのです。
しかしながら、まだ全然使えるPCを置き去りに、忘れたという理由で新しく買うPCって変すぎますよね。店員さんになんて言えば良いんですか。
『ちょっと家に忘れちゃって、至急必要なんです』、そんな富豪みたいなセリフは言えません。
そんな富豪みたいな理由でMacを買う人は、富豪以外に居ません。
そして生徒の人からも『PC買ったんですか?』
と聞かれた時に『そうなんです、ちょっと家に忘れてしまいましてね』
なんて言おうものから、この講師の授業に対する執着心の恐怖で押しつぶされるに違いありません。
例えば料理教科でカレーの授業があったとして、
その先生が全て具材を忘れた時に、全てインドからまた取り寄せるようなものじゃ無いですか。
それは違いますね。変な例えをしてしまいました。



ともかく、以上3つの思考を
約1分の間にぐるぐると巡らせた結果、
素直に謝罪し、開始時間を
遅らせてもらうという
判断をし、事なきを得ました。

申し訳ない。
本当に気をつけます。



あと、最後の変な例えは忘れてください。




















みなさまご機嫌麗しゅう。
近況報告でもします。


今月、お世話になってる作家事務所との
お仕事で東京に行く機会がありまして、
せっかくなら前乗りして
誰かに会いたいとの事で、カナブーンの
鮪君とマーシー君に会ってきました。


去年の一連の報道で、あまりにも
不憫に思った俺は深夜に関わらず
鮪君に愛を込めたLINEをしたんですが、
得てして文面でのやり取りでは
精神面での心配は拭いきれずにいて、
ずっと機会があったら会おうと
決めてたんですね。


もちろんマーシー君にも会いたかったですよ。
LOVESIXがまだ方向性を決めかねている時に
サポートベースでお世話になってましたし、
もちろん大好きな人です。


しかしまぁ、
ここにきてファンの皆が
一丸となってお2人を支えるぞ!
というのがSNSから垣間見れて凄いです。
それは、鮪君が残してきた『生き様』だったり、
人生に対する誠実さだったりの賜物だと
思います。


鮪君とはもう5年くらい会ってなかったんですが
LINEでのやり取りは定期的にしてました。
新曲を褒めてくれたり、
俺が逆にカナブーンの新曲を絶賛したり、
なんやかんやと。


それでも5年ぶりに会えることが決まって
胸が躍りましたね。
なにせ後輩及び弟子ですからね。俺は。

当日、鮪君が予約してくれた焼肉屋さんの
住所を見て、
ふむふむ、世田谷区ね
などと知ったような感じで乗換案内を
7分置きに睨めっこしては、
ついに世田谷駅に降りるも、
そこからその焼肉屋は徒歩35分と
驚愕の数字を突きつけてきた時は
流石に焦りましたね。


いや、単純に俺が最寄りの駅を
勘違いしてしまっただけの話なんですが。


競歩よろしくスピードで
世田谷を駆け回り、15分遅刻からの
5年ぶりの再会は、
いい意味で久しぶりな感じもなく
相変わらず毛布のような暖かい人でした。

マーシー君もきてくれて、
楽しかったです。

お2人は今のカナブーンの状況を
楽天的に捉えていて本当に安心しました。
まぁ、こんなにも沢山の名曲を
世に残し続けてるんですから、
鼻から俺が心配する余地もなかったんですがね。


という名目とは別軸で、
俺が今回こんなに素直に
会いたい、と連絡出来たのは
もちろんお2人の状況を
心配していたりもあったけど、
それよりも
紛れもなく俺だって音楽業界に
喰らい付いてるからなんですね。

20代は色々あったし、
『アイツはもう終わった』なんて
方々で言われてたと思うけど

その次の日だって、東京でアイドルの
Recの仕事があって、
作家活動もそれなりに結果出していて、
琳子という天才シンガーのプロデュースも
してて、なんというか、
いまだにお金はそんなに無いけど、
ちゃんと必死に音楽やってる。

だからやっと会えると思ったし、
実際鮪君も俺の近況をそれとなく
分かってくれてたから今回
すんなり会ってくれたんだと思う。


鮪君は優しいけど、厳しい一面もあるからね。
『別に昔からの知り合いでも
音楽やってない奴とは話すことがない』
って、きっぱり言ってました。

まぁ、そうですよね。
俺だってそうです。


冷たいって思われるかもだけど、
昔からの地元の友達とかは除いて、
音楽で切磋琢磨してきたやつらが
音楽をやめて、別の人生を歩んで、
それはそれで尊敬するけど
別に話すことは無いし
会いたいとも思わない。



実際、焼肉屋さんでは
思い出話に花を咲かす事なく
これからのこと、これからの音楽のこと、
たまに女の子のこと、
そんな感じでした。


アツイよね。

FUZZ時代の話とか、昔住んでた家の話とか
色々あるけど、
いくらお酒が入ろうが
思い出話とかどーでも良いんです。

今が全て。
今何をしているか、目は輝いてるか、
ワクワク出来ているか、人生における
重要な事ってそれ以外に何もないですね。


と言うわけで、
やっぱり尊敬出来る先輩の前では
永遠に後輩ムーブしてしまいますね。
ずっとヘラヘラしてました。甘えてました。
お肉、1枚も焼きませんでした。
マーシー君がずっと焼いてくれました。
いや、流石にぼく後輩としてヤバすぎるんで
焼かせてくださいって言ったら止められました。

後輩はただ食べるだけで良いって言われました。



いやはや楽しかったな。

近いうち、
我々が琳子を率いてフェスで共演しますよ。
それは絶対。



次の日は疾走クレヨンのレコーディングでした。
これまた初めての経験で、
自分が作った曲の歌入れ現場というのは
少し不思議な空間でしたね。

しかしながら俺はリーダーシップというものを
持ち合わせていないので現場の統率には
苦労しました。
というか、途中からペアの作詞家の人に
任せてました(おい)

そんな反省点も踏まえて、
これまた持ち帰るものばかりでしたね。



しかし本当に何も食べる時間がなく
初めて新幹線でお弁当を食べました。
新幹線でお弁当を食べるの、
なんかめっちゃ恥ずいんですよ。
でもそんなのどうでもいいくらいに
お腹が空いてましたね。



さて、音楽を続けます。



















つい先日『間一髪で助かった』
という経験をした。

この『間一髪』レベルは尋常では無かった。

終電間に合った〜〜と言うような
生優しいものではない。
例えるなら入試開始5分前に起床し絶望するも
そこに突如ケンタウロスが現れ、
入試会場まで猛スピードで運んでくれて
無事に間に合う、くらいの、
運の要素も孕んだ間一髪度合いだった。



友人宅で遊んでいて、そのまま
泊めてもらう運びとなり
楽しい一夜を過ごした。

そしてその翌日お昼ごろに解散し、
とりあえずお風呂に入りたかった俺は
なんか自宅のお風呂に入るのが
嫌だったので(夜に入ると言う概念があるから)
そうだ銭湯に行こうという決意をした。

昼間から開いている銭湯に着き、
入浴券なるものを買い、鍵を渡され
スムーズに更衣室まで到着した。

何せ銭湯は久々だったので、
『あれ、銭湯のシステムって
こんな感じだっけか...?』
と、更衣室に至るまでの一連に、
一抹の違和感を感じた。




何か、ものすごい大事な何かを
すっ飛ばしている気がしたのだ。


まぁでも、銭湯で抱く違和感なんて
特段大した事ないだろうと、
その違和感をおざなりにした。


それにしても銭湯というのは異常である。
あらゆる他人が一同に介して
全裸になり、思い思いにお湯へ浸かる。
なぜ暖簾をくぐったその先から
全裸になっていいんだ。

誰が決めたんだ?
ほんまにええんか??
脱ぐぞ??俺は今から、脱ぐぞ??


あのお爺さんも、あの坊ちゃんも、
そして俺も、この空間に流されて
上半身はおろか
下半身までも全開に露出してしまっているが、
果たしてこれは大丈夫なのか??


突然警察が乗り込んで、
こうぜんわいせつなんちゃらの罪で
手錠を掛けられたりするのでは??



と、あまりにメタすぎる感情を抱きながら、
まぁ入るか。と、扉を開けた。


これだ、銭湯というやつは
まず掛け湯をしなくてはならい。


桶でお湯を掬い、
いざ身体に掛けようとしたその瞬間に、
脳内で『ヤメロ!!』
と、もう1人の危機管理に長けた自分が
素っ裸の俺に言い放った。


なぜ、もう1人の俺が掛け湯を
中断させた...?





これは、果たしてさっきの違和感...??








は!!!!!












バスタオル買ってない!!!!!!!! 









そう、俺はあまりの銭湯ブランクに
バスタオル、ミニタオル付きの券を横目に、
ただただお風呂に入る権利だけを
得ていたのだ。



このシンプルかつ大胆な失念が、
冒頭の違和感だった。



もし
あのまま掛け湯をしてしまっていたら、
俺はタオルを持ってないのに
びしょ濡れになっていた。
そしてそのまま浴槽に浸かり、
身体を洗ったりして、
うぃ〜という具合に更衣室に戻る。
そこのロッカーにはタオルが無い。
無いのだ。

つまりそれは、
水分を吸収する術が無いのだ。


びしょ濡れ散らかし人間の誕生である。


そうなれば
そのまま自然乾燥を待つしかない。
恐らく30分はかかるだろう。


更衣室に、お風呂にあがった人間が
拭くでもなく、ただただ直立不動で
自然乾燥に身を委ねている人間がいたら、
それはもう不審者だ。



見てパパ、あの人濡れたまんまで
ひとつも動かないよ



見ちゃダメ、
さ、なんか飲み物で買おっか


と言った囁きが方々で行われて


いよいよ警察が到着し、

『君に通報が入っている!
びしょ濡れ罪で逮捕する!!』


と言った感じで牢獄生活がスタートするのも
安易に想像が出来る。



そんな地獄ライフを
間一髪のところで食い止めた。
しかもこれは他人による助けではなく、
本能の部分で、実力でだ。



実力で勝ち取ったのだ。



その誇りを胸に、
もう一度更衣室で服を着、
番台に向かい
『なんかタオル買うの忘れちゃってました笑』
とヘラヘラしながら
事なきを得た。




ありがとう俺。
そしてケンタウロス。