「日本の国債発行残高は約1000兆円、地方政府の借金である地方債の発行残高は約200兆円、国と地方を合わせるとその総額は約1200兆円に達する。
政府全体が保有する資産(金融資産)とのバランス(負債総額から資産総額を差し引いたネットの純負債額)に着目すると、実質的な政府の借金(金融負債)総額は約120兆円で、会計学上では”健全な”額の純負債総額なので、このままでも何も心配が要らない。」と言う議論もある。
上記の議論は、政府の債務と資産に関する単純化された見解に基づいているようだ。政府債務と資産のバランスを見ることで、政府の財政状態を知ることができるのは事実だが、考慮すべき重要な要素がいくつかある。
資産の性質:この議論では、政府の資産を構成するものは特定されていない。政府は通常、現金準備、投資、インフラ、天然資源など様々な資産を保有している。これらの資産の価値や流動性は大きく変動する可能性があり、債務を相殺する能力に影響を与える。
債務の持続可能性: たとえ負債総額が金融資産と一致していても、債務負担の持続可能性は、経済成長、金利、債務返済能力などの要因に左右される。GDP比で高水準の債務が経済成長を妨げたり、財政を逼迫させたりすれば、やはり問題となりうる。
市場の認識: 金融市場は、政府債務を会計原則と同じように解釈しない場合がある。市場参加者は、政府の信用力を評価する際、政治的安定性、財政政策の信頼性、潜在的な債務不履行リスクなどの要素を考慮する可能性がある。
将来の債務: 政府の債務には、未払い債券だけでなく、年金、医療、社会福祉プログラムなどの将来債務も含まれる。これらの未積立債務は、政府の長期的な財政持続可能性に大きな影響を与える可能性がある。
リスク要因: 人口動向、地政学的リスク、世界経済情勢などの外的要因は、政府が債務を効果的に管理する能力に影響を与える可能性がある。こうした要因を無視すれば、政府債務に関連するリスクを過小評価することになりかねない。
結論として、政府債務を金融資産と比較することで、全体的な財政状況をある程度把握することはできるが、政府の財政健全性を正確に評価するためには、より広範な要因を考慮することが重要である。上記の論考では、包括的とみなすには十分な詳細と分析に欠けている。