書評『ドイツ本土戦略爆撃』(大内健二著、光人社/潮書房光人新社) | 鳳山雑記帳アメブロ版

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 大内健二さんと言えば大戦時の輸送船、護衛空母、商船隊、特設艦など船に関する著書が多いです。特に護衛空母入門、戦時標準船入門、戦時商船隊などは名著だと思います。その大内さんがドイツ本土戦略爆撃について記した本書を見て珍しいと思い購入しました。

 

 内容は主に英米の戦略爆撃に関する考え方、戦術に関してのものですが、大内さんらしく資料を豊富に使い分かりやすく書かれていました。一応建前上軍事施設や工業拠点を中心に爆撃した米軍、ドイツ憎しからドイツの一般市民を殺害する目的で夜間爆撃で大量の爆弾を民間施設に投下した英軍、勝敗が逆だったら確実に戦争犯罪として裁かれる行為であり、勝者の驕りが見えて不快感を抱きました。

 

 大内さんは事実を淡々と記し感情をできるだけ抑えて書いているだけに、余計恐ろしく感じました。とくに有名なドレスデン爆撃に関しては本当に胸糞悪いです。ドレスデンは旧ザクセン王国の首都で文化遺産も多い日本で言えば京都に当たる都市。1945年当時人口50万人ほど。ドイツ軍の軍事施設や兵站施設もなく一応交通の要衝ではあるものの軍事的には重要な都市ではなかったため、それまで連合軍は爆撃の対象から外していました。ドレスデン市民は文化遺産を守るためにあえて連合軍が爆撃しないのかと安心していたそうです。東プロイセンや白ロシアのドイツ系市民はソ連軍の迫害を恐れ多くがドレスデンに難民として流れ込んでいました。その数20万人とも30万人とも言われます。

 

 連合軍はドレスデンに難民があふれる時期を狙って大量の一般市民を殺害する目的で1945年2月13日から15日にかけて爆撃を開始します。昼間爆撃は米軍、夜間爆撃は英軍が担当し述べ1300機の重爆撃機がドレスデンに飛来、3900トンの爆弾を投下しました。卑劣なのは第一波の爆撃が終わりドレスデン消防隊が消火活動に入った時間を見計らって第二波が襲い掛かったことです。これで防空壕から出てきたドレスデン市民にも被害が拡大しました。連合軍は焼夷弾も効果的に使い市民の逃げ場を塞ぐように爆撃、実に市街の85%が破壊されます。人的被害に関しては15万人だそうですが、これには東プロイセンなどからの避難民はカウントされていないため、一説には50万人近くが犠牲になったとも言われます。

 

 これは東京大空襲や広島、長崎への原爆投下にも匹敵する連合軍の犯罪行為です。どんな理由を上げようと一般市民を殺戮することに大義があるはずありません。よく日本で、「米軍は貴重な文化遺産の破壊を防ぐため京都や奈良の爆撃を避けた」などと寝とぼけたことを言う者がいますが、ドレスデン爆撃の実態を見ると単に運が良かっただけとも言えます。敗者である日独が悪かったと言われますが、勝者である連合軍側も非道な行為を数多くやっています。ですから勝てば官軍なんです。

 

 酷い目に遭うのは我々一般市民です。こういう悲劇を繰り返さないためにも十分な軍備を持ち敵国に絶対侵略されない態勢を整えなければならないと思います。本書を読みながら暗澹たる気持ちになりましたが改めて国防の重要性を思い知りました。憲法9条や平和主義はこういう厳しい現実を知らない空論です。自衛隊の削減・廃止や基地反対を唱える連中は国賊だと思いました。

 

 皆さんも戦争の汚い部分、厳しい現実を知るために一読をお勧めします。