「下街道」を歩いているのですが、ちょっと寄り道しています。赤線が下街道、青線が実際に歩いた道です。

 

愛知県庁本庁舎から東側、建中寺あたりに至るエリアは、江戸から明治・大正へと続く、名古屋の近代化の歩みを伝える多くの建物など、貴重な歴史的遺産が残されています。

 

このエリアは「文化のみち」と名付けられ、建築遺産の保存活用が進められています。江戸時代、名古屋城から南に広がった商業地区に対し、東に延びた武家屋敷地区が「文化のみち」のルーツです。明治維新による武家の没落後、明治中期には先端産業ゾーンとして活気を取り戻し、時計やバイオリンがこの地で国産化され、豊田佐吉や大隈栄一が機械工業を興しました。また輸出陶磁器の絵付業やガラス工業の中心地ともなりました。そんな起業家たちの屋敷町となったのがこの地区で、大正ロマン香る町並みを残しています。そんな町並みの散策です。

㊟豊田佐吉は豊田自動織機などを発明、トヨタグループの創始者です。大隈栄一は大隈鉄工所(現オークマ)の創業者です。

 

 

 

 

「主税町公園」は、かって大規模な陶磁器の絵付工場があったところです。明治29年(1896)に森村市左衛門が美濃や瀬戸からの陶磁器生産の荷受けや堀川を使った運送の立地条件の良さから、武家屋敷跡用地を入手し、工場を建設した場所で、その後の名古屋の輸出陶磁器産業の繁栄のきっかけとなりました。

㊟森村市左衛門は、福沢諭吉から陶磁器の海外輸出を勧められ、明治9年(1876)森村組(現ノリタケ・TOTO・日本碍子等の森村グループ)の創始者です。

 

 

 

 

国道41号線を渡ったところに「カトリック主税町教会」があります。

 

名古屋でカトリックの布教が始められたのは、明治20年(1887)頃のことで、武家屋敷を購入し仮聖堂としていました。

 

聖堂の建設は、明治37年(1904)10月竣工。木造平屋建て桟瓦葺き切妻造の建物です。正面玄関ポーチには、三連アーチがかかっており、屋根の上には十字架が乗っています。現在は名古屋教区発祥の教会として記念聖堂となっています。

 

鐘楼は平成2年(1990)に復元されたものですが、中の鐘は1890年フランス・マルセイユで製造されたものだそうです。

 

 

 

 

創建当時は畳敷きだったそうですが、今はフローリングとなっています。聖堂のオルガンや祭壇は創建時のものだとか。

 

 

 

 

 

 

「旧春田鉄次郎邸」です。洋館の1階がレストランとなっていて、その奥に木造瓦葺2階建ての建物があります。陶磁器貿易商として財をなした春田鉄次郎が武田五一に依頼し建築した邸宅です。大正時代の建築様式を今に伝える建物ですが、この日は閉まっていました。

㊟春田鉄次郎は、21歳で中国、29歳でアメリカに渡航、航空路のない時代に、世界を舞台に活躍した人物です。「自ら働かずして財を得るなかれ」という遺志を汲み、死後多額の財産が名古屋市に寄贈されました。

武田五一は、関西建築界の父ともいわれる建築家で、山口県庁舎・県会議事堂(重文)など多数あります。

 

 

 

 

 

その隣が発明王で実業家・豊田佐吉の実弟であった「旧豊田佐助邸」です。かってこの界隈には、豊田佐吉邸、豊田利三郎邸、豊田喜一郎邸もありましたが、豊田家関連ではこの建物だけが現存しています。

 

豊田佐助(1882~1962)

トヨタグループ創始者豊田佐吉を助け事業拡大に尽力し、豊田紡績社長などを歴任。豊田利三郎は佐吉の娘婿でトヨタ自動車初代社長などを歴任。豊田喜一郎は佐吉の長男で豊田利三郎のもとでトヨタ自動車を創業、2代目社長。

 

 

木造陸屋根2階建て洋館(大正12年以前建築)と、木造瓦葺2階建て和館(大正12年建築)の建物です。現在はアイシン精機所有ですが、名古屋市が無償で借り受け一般公開しています。

 

 

 

 

 

玄関から入った廊下の突き当りのなんとも可愛いランプシェードです。

 

 

 

 

 

応接間のシャンデリア。漆喰模様がまたいいですね。

 

 

 

 

天井の四隅にある自然換気口のマーク。よく見ると鶴亀のマークに「とよだ」の文字が…

㊟豊田家は、「とよ」と濁りますが、「トヨタ自動車」は「トヨ」と濁りません。

 

 

 

 

一階和室です。

 

 

 

 

雪見障子ならぬ「猫間障子」というのだそうです。障子の一部分が左右に開くようになっています。雪見障子は通常一部分が上下に開け閉めができ、ガラスが入っています。それに対し猫間障子はガラスが入っていません。

 

 

 

 

二階廊下。数寄屋風天井です。

 

 

 

 

二階和室です。

 

 

                                                                               2022/5/5