飛騨古川の町並み散策を続けます。
伝統ある城下町には、出格子の商家や白壁の土蔵が続き、鯉の泳ぐ清らかな瀬戸川のせせらぎが聞こえます。中心部には古い町並みが残り、飛騨の匠の技と心意気が息づいています。
典型的な飛騨の町家造りです。
屋根に載る明り取りがアクセントとなっています。
飛騨古川の美しい町並みをなす、壱之町にある「三嶋和ろうそく店」。
歴史と風情を感じさせる店構えは、通りの中でもひときわ目を引く存在です。2002年上半期の連続テレビ小説『さくら』の舞台となったお店です。
現在の御当主で7代目という江戸時代中期から続く老舗です。ここで作られている和ろうそくは、「生掛(きがけ)和ろうそく」と呼ばれ、混じりけのない100%植物性。全国に10軒ほどしかない和ろうそく店の中でも、すべて手作りなのはここだけだそうです。
和ろうそくの原料は「ハゼの実」から作られ、芯は和紙と真綿で作られます。和ろうそくの特徴は、西洋ローソクに比べ、①煤(すす)が少ない。
②燃焼時間が長い。
③炎が呼吸し、止まっている時と燃え盛るときがあり、
生きている。
・・・なんだそうです。
飛騨古川には、2軒の造り酒屋が並んでいます。手前が「蒲(かば)酒造場」です。
宝永元年(1704)創業。以来310余年の歴史を刻む老舗です。主屋をはじめとする建物は、国登録有形文化財に指定され、飛騨古川を象徴する景観の一翼を担っています。
厳しい気候が育む酒米「飛騨誉」を使った清酒「白真弓」や「やんちゃ酒」が人気とか。
そのお隣に建つのが「渡辺酒造店」です。享保17年に渡邉家初代が「荒城屋」を起業し、3代目が両替業を始めるとともに、生糸を京都に販売、財を成します。
酒を造り始めたのは5代目で、生糸の商いで京都を旅したおり、旨い酒が忘れられず、この飛騨の地で酒造りを始めたのです。明治3年(1870)のことで、それが好評を得て「蓬莱」と名付けられたのです。
壱之町通りを代表する景観を誇る歴史的建物で、登録有形文化財に指定されています。
「ともかく古川町の町並みは、みごとなほど気品と風格がある。観光化されていないだけに、取りつくろわぬ容姿や表情、あるいは人格さえ感じさせるのである」・・・「蓬莱とか白真弓とかいった板看板の出ている造り酒屋の家などは、格子美の傑作かと思われる。階上・階下とも家の正面はすべて出格子で装われていて、階上の格子はあらく、階下の格子は繊細にしつらえているあたり心憎いばかりである」・・・司馬遼太郎『街道を行く・飛騨紀行』
杜氏殿の 心澄みゆき 魂きはる
いのちの酖け 生まれ初めけり 遼
瀬戸川と白壁土蔵群を行きます。壱之町通りの造り酒屋の裏側が土蔵群となっています。連なる白壁土蔵とその袂に流れる瀬戸川は、飛騨古川の町並みを語るときに欠かすことのできない町の象徴ともいえる風景です。
「円光寺の高さ50センチほどの石積みの低い結界と、となりの白亜の酒蔵とのとりあわせがよく、そのあいだをながれる用水路の水のきらめきをふくめて、みごとな日本建築群による都市造形をつくりあげている」・・・司馬遼太郎『街道を行く・飛騨紀行』
瀬戸川は、瀬戸屋源兵衛という人物が世話人になって作られた用水路だそうです。
千匹余りの色とりどりの鯉が泳ぐ瀬戸川は、そのしっとりとした風情と情緒豊かな景観です。城下町飛騨古川の顔ともいうべき人気スポットです。
500m続く白壁土蔵群は、四季折々に見せるその情景がとても美しい。
円光寺山門です。元和5年(1615)徳川幕府の一国一城令により廃城となった増島城の城門を、元禄8年(1695)移築したものです。破風のような小さい櫓がつき、「垣林堂」の額がかかっています。
「見あきぬほどにかたちがいい。この門一つみても、茶人金森可重の美的感覚のほどが察せられるのである」・・・司馬遼太郎『街道を行く・飛騨紀行』
室町時代の様式を今に留めるお寺で、浄土真宗西本願寺のお寺です。
本堂の両側の妻に、「水呼び亀」があり、明治37年の大火から寺を守ったと伝えられます。
飛騨古川の冬の風物詩「三寺まいり」は、親鸞聖人の御遺徳を偲んで町内の三つのお寺に人々が詣でたことが始まりとされます。
毎年1月15日に行われるこの行事は、300年以上も伝わる伝統行事で、明治・大正期には、野麦峠を越えて出稼ぎに行った飛騨の女工たちも帰省し、この日は着飾って巡拝したそうです。
円光寺・本光寺・真宗寺の三つのお寺を巡拝するのですが、「♪嫁を見立ての三寺まいり」と飛騨小唄にも唄われたように、これが若い男女の出会いの場だったことから、現在では「縁結びが叶うお参り」として注目を集めているそうです。
このお寺には、先の「三嶋和ろうそく」の店主が心血を注いで作る大きなろうそくの火が灯ります。
お借りした写真です。
また縁結びの願いを込めて人々が灯す「千本ろうそく」が瀬戸川の川面に揺れ、幻想的風景が広がります。
お借りした写真です。





























