イスラエルが長崎の平和記念式典に招かれなかったことが注目されている。ガザ侵略と虐殺行為も非難されている。この非人道的な行為と武力志向は中東だけでなく、ラテンアメリカでも顕著であった。
よく知られているのが、ニカラグアとイラン・コントラ事件である。ソモサ独裁政権はイスラエルにとって格好の武器輸出相手だった。1979年に社会主義的なサンディニスタ民族解放戦線がソモサ軍に勝利すると、イスラエルは米レーガン政権とともにニカラグアグア包囲網を構成する。カーター政権で人権侵害国には軍事援助は認められたくなったので、イスラエルは代理でグアテマラやホンジュラスなどに武器を提供し、軍人に訓練を行った。ホンジュラスでは土地改革を求めていた先住民の村落も破壊した。コントラ事件は、反サンディニスタ(コントラ)に、アメリカの代理でイラン政府に武器を売却した代金の一部をあてがい、レバノンでPLOから奪ったソ連製武器を提供するものだった。イスラエルは非人道的な死の米代理商人だった。
この事件の土台には、イスラエルがラテンアメリカの石油や食肉などを輸入し、人権侵害国である軍政下のラテンアメリカ諸国に武器を輸出する、という貿易関係があった。第四次中東戦争以降、イスラエルの兵器産業は総輸出の2割強、雇用6万人になるまでに肥大する。その輸出の5-6割がラテンアメリカ向けだった。人権侵害を助長する反乱鎮圧武器と技術者の訓練、維持管理を売りまくった訳だ。アルゼンチンやチリの軍事政権にもにも戦闘機数十機や米製対航空砲を売却した。そうして左翼狩りの犠牲者は数万人に及んだ。
イスラエルとアメリカの結びつきは、よくユダヤ資本の影響力として説明される。でもそれと並んで、イスラエルがアメリカの死の代理商人として軍産複合体に深く組み込まれているのにも注目したい。イスラエルを通じることで人権侵害や内政干渉も平気なのだ。長崎の平和記念式典にイスラエルが招かれないとエマニュエル米大使も辞退し、イギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、カナダもこれに続いた。共通点は、ラテンアメリカやアフリカ、中東などに介入して軍事独裁政権を擁立し、人権侵害を黙認して武器を売り、資源利権をむさぼる、という反社会的国家群なのだった。こうした反社会的国家群に日本はいつまでも従っていていいのだろうか。