閉鎖系は必ずいくつかの循環に収斂する。

 これはバーコフ=フォン・ノイマンの定理から明らかだ。先ず二重確率行列は置換行列の線形結合で表される、そして、置換行列はグラフの隣接行列とすると閉路を表す。さらに二重確率行列の最大固有値は1なので、べき乗法に従えばこれに対応した固有ベクトルに収斂する。固有ベクトルをそれぞれのノードに与えられる量、隣接行列をノードからノードへの分配、とすればこの分配を繰り返してもそれぞれ一定である。このことから結論が得られる。

 このように考えると、保存則が成立するようなエネルギー系、質量系は閉鎖系なので、いくつかの循環で表されることが分かる。水の分子、炭素原子についても地球全体で見れば、ほぼ閉鎖系になる。光合成を元にしたエネルギーの循環のシステム、流域治水の前提になる水の循環システム、温暖化現象で注目される炭素の循環システムなどの定常状態の存在は、バーコフ=フォン・ノイマンの定理に裏付けられている。

 循環思考は、地球規模で閉鎖系を対象とする場合に欠かせないことが分かる。そこに恒常的ないくつかの循環系を成り立たせるのが、持続可能性の鍵である。