矢印を繋いでも、戻りがなければ一回きりで終わる。働きを持続可能にするには、矢印を繋いで回路にする必要がある。

 例えば、水は、雨が注ぎ川となって海に流れ、蒸発して雲になって雨を降らせ、という回路になる。土に沁み込んで地下水として貯蔵され、という分岐があるにしてもいずれ海に流れていく。この水の循環はずっと持続する。途中で水車を回しても、ほんの少し水流が弱まるだけで水量は変わらず、この循環は続く。水流発電は優れているな。

 これが石油や石炭になると違う。石油は、中生代にプランクトンや藻の死骸が蓄積され、バクテリアと地熱の作用で生成されたものだ。石油を燃やすと、熱とともに二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物が発生するが、それらがプランクトンや藻に速やかに戻るわけでは無い。石炭は、中生代の大型のシダや樹木が倒れ、白色腐朽菌がない時代なのでそのまま蓄積され、地中で熱変性を受けて生成された。白色腐朽菌のある現在は、燃やしたらもう石炭はできない。一回きりである。当たり前だけれど、元を辿っていって循環にならないのは持続可能ではない。温暖化ガス云々を持ち出さなくても、石油石炭は将来世代に残すように、と言える。

 この循環図式で社会問題を考えてみよう。例えば少子化。高齢人口の割合が増える、現役世代の負担が増える、負担が増えると子育てに回せないと思う、なので子どもの数を抑える、そうすると、この先高齢人口の割合がさらに増える、さらに現役世代の負担が増える、という悪循環になると言われる。

 でも本当だろうか。循環図式の一つ一つのステップを確かめる。この先は高齢の団塊世代が減るので、現役世代の負担も和らぐ。そもそも高齢世代は全体では富裕なので、世代内で負担し合えば済む。そう考えると、少子化対策にいっぱい予算をつけるより、資産課税主体にする、年金を賦課方式にする、そしてしばらく待つ、で少子化は問題でなくなる。丁寧に矢印を一つ一つ吟味すれば、おのずから問題が解けることもある。

 循環図式の件は、もっと検討してみる。