都知事選を前に、重要な争点を考えてみた。まとめると利権優先対生活環境優先になる。石原都政以来、再開発利権、五輪利権、道路利権、公園利権等によってタワー公害を増長させ、木造密集地域の地震火災にも無能、貧困対策も蔑ろ、と劣化した生活環境を再生することが課題だと思う。

 生活環境としては緑のネットワークが争点にできる。神宮外苑の街路樹伐採が問題になっているが、これは皇居から赤坂御所、神宮外苑、明治神宮、代々木公園、新宿御苑と連なる緑のネットワークを保全出来ないのか、という視点から捉えられる。緑地間は鳥たちの飛行距離範囲内にあるので、種子を運んで生態系を守る。都市の空気を潤し、冷ます。人々の憩いの場でもある。これに網状の緑地帯が繋げられる。都内には片道三車線の幹線道路が環状・放射状に広がる。これが、自動運転が全面展開されれば車間距離が十分の一になるので、車道は二車線、さらに一方通行の一車線でもまかなえるので、四車線分が緑地帯に出来ることになる。

 災害対策では、上下水道、電力、都市ガスといった生活基盤が被災で機能喪失するのを予防するのも争点になる。1千万人の生活が維持できず、不衛生で伝染病も蔓延する。いまは無策で、下水も9割が合流式なので、汚水も東京湾に流れ込む。本來なら共同溝を整備して、そこに上下水道、電線、ガス管を格納して、防災と修繕をしやすくするのが基本である。こんな基礎を蔑ろにしていて、都の存在意義も問われる。

 河川の氾濫対策も争点である。2019年の台風19号では荒川が氾濫危険水位になり、あとわずか53cmで江東5区の250万人が行き場を失う恐れがあった。中下流域でも降水量が増せばダムでは防げない。スーパー堤防の完成にはテンモンガクテキナ費用と年月がかかる。本来なら流域治水として関東圏が連係し、山林を手入れしてブナ、シイ、ナラといった潜在的自然植生に戻して保水力・保持力を高め、横浜国際総合競技場一帯のように遊水地を設け、堤を駆風して水の勢いを削いで、問題のない場所に逃がす、といった計画と実行が必要だと思う。

 地震火災対策では、効果の薄い道路拡幅や沿道の高層化は止める。道路利権、開発利権ばかりが潤い、車優先で人間が疎外され、圧迫感を受ける。そうではなくて、木造密集地域における耐火造への共同建て替えを促す。特段の予算措置は不要で、対象建物の指定、価格査定、緩和措置の放棄を行えば、敷地統合の資産効果でうまく賄える。40万棟を共同建て替えで5万棟にすれば、大規模火災は防げる。

 さらにタワー公害、都市の中低層化も争点になる。タワー公害対策では、容積率緩和による再開発を止めることになる。タワー乱立で海風の冷却効果が抑えられ、壁面の輻射熱も深刻である。景観も阻害し、通勤疲労、混雑ももたらす。試算では熱で37兆円、圧迫感で30兆円等、外部不経済が開発利益を上回る。資産差益は大手ディベロッパーと建設関連、損失は周辺のビルオーナーと生活者に回されるという不公平な制度だ。こうしたタワー公害に対しては、容積率緩和を止めるのが一番である。海風を山手まで通すには、国交省の検討では、ビルの高さ50mが限界である。既存のタワーには超過分に課税することも有効である。

 都知事選の争点のうち、都市計画関連と今後の対策は、こんなところだろうか。石原都政から小池都政まで、こうした重大な都市問題に応えるどころか、なおざりにして悪化させている。なんとかならないか。