人間以外の生物について、どのような知性があるのだろうか?

 ハリガネムシは、寄生したカマキリなどの昆虫を水に飛び込ませて水中で産卵する。有性種子植物は、ミツバチらの送粉者に花粉を運ばせて受粉し、花粉の雄性配偶子と花の胚珠を受精させる。このように生物界では、ラジコンでミニカーを走らせるように、相手を操作して自分の目的を達成する、という操作性知能があるように思われる。この操作性知能は成り立つ条件を調べる。

 操作性知能の数理的な基礎づけは、圏論の米田埋込みに求めることが出来る。つまり相手の生物の行動が識別可能で、こちらの働きかけが数え上げられる位であれば、両者を一対一対応に結びつけることが出来る、という定理である。圏なので、対象とそれらの間の働きかけがあり、働きかけは合成できて結合律と単位律が成り立つことが前庭になる。動作や化学反応、電気現象はこうした前提を満たすだろう。

 そうすると細胞レベルでも、相手が放つ化学物質や微弱電流、振動を知覚できるし、こちらの動作や分泌、発声などは数え上げられる。ポイントは、相手の行動を相手の行動様式として知覚することになろう。こうした検討を踏まえると、操作性知能は、ハリガネムシや有性種子植物に限らず生物界には広く認められるはず。