10年前の共謀罪から、秘密保護法、さらに経済安保情報保護法が成立した。思っただけで処罰、何が秘密かが秘密、どこまでも身辺調査、と基本的人権を侵すものだと批判されている。戦前の治安維持法に近づいているようだ。戦前、この法を根拠に思想弾圧がなされ、特高警察の虐殺や拷問などで亡くなった人は小林多喜二をはじめ1,697人以上に上る。

 特高の精神は、今にも続いているのかもしれない。戦後、特高官僚は復権し、自治省や警察庁、厚生省などで要職につく。国会議員になったのも54人になる。共産党を弾圧し、議員として紀元節の復活に尽力し、大分県知事を務めた、という纐纈弥三がそんな例だ。さらに奥野誠亮らのように、国家公安委員会委員長、自治大臣、法務大臣、文部大臣を務めるものもいた。ドイツで言えば、ゲシュタポ出身者が連邦議会議員や内務大臣を務めるようなものだ。

 議員の中には、高村坂彦、町村金五、保岡武久、唐沢俊樹、古屋享といった名前もある。その子は地盤を引き継いで、高村正彦、町村信孝、保岡興治、唐沢俊二郎、古屋圭司(甥・養子)といった自民党の議員になり、大臣などの要職を務めている。反共で結びつくのか、統一教会とも特に関わりが深いことも指摘される。そして高村正彦、町村信孝は共謀罪の制定に中心的な役割を果たした。

 国家統制に強力な治安維持法、こんな特高の系譜と代々の執念で復活されようとしているのか、と寒気がする。戦争責任が有耶無耶のまま米の意向で逆コースになったツケであろう。拷問の代わりに、大河原加工機事件のように冤罪で長期拘束、マスコミを利用した社会的抹殺、ないしは弱みを握って忖度を強要、という手段を使うものらしい。このままでいいのか。