世界を敵に回しても君を守る、とか言うような歳でもない。でも世界というか宇宙が敵になっていることは、ちても身近にもある。

 その一つが、食卓からトーストを落とすと、バターを塗った面が下になる、という事情である。これはテーブルの高さが76cm位だと、ちょうど半回転するからだという。そしてこのテーブルの高さは、地球の重力による。重たい頭部を持つ二足歩行の動物がこの生態系で生き延びるには、この筋肉や骨の組成からこの高さに収まる。この重力と水の存在は、太陽から一億五千万キロの距離で成り立つ。太陽の表面温度は6千度。光度と質量には関係があるので、水が保てる気温から重力は一定範囲に限られる。地球はピッタリなのらしい。

 したがって、君を守る、トーストが食卓から落ちても君の朝食を守る、バターを塗った面を落ちても上向きにしよう、と宣言するのは、宇宙を敵に回すことになる。できない相談なので、諦めた方が良い。バタートースト落下問題は、宇宙の摂理からして必然なのだった。

 あるいは、キミとボクと子どもたちの間では何でも民主的に決める、という宣言も宇宙の摂理に合わない。アローの可能性定理からすると選択肢が3つ以上で選好に推移性・完備性があるというとき、一人の言いなりにしない、全員合意ならそうする、決め事に関係のない問題を絡めない、といった条件をみな満足させることはできないのだ。ちょっと残念だけど。

 君を守る、いままでずっとそうだったように。こう宣言しても、世界は5分前に出来たのだから、いままでずっとというのはたったの5分もない、と反論されるとうまく返せない。

 こんな感じで、世界を敵に回すとなかなか厄介なのだった。あんまり大見得を切って約束するものではないようだ。