いまは不動産バブルなのだろうか? もっと高騰するのだろうか?

 都区部において新築マンションの平均価格は、バブル期で8,667万円なのが昨年は11,483万円と大きく上回っている。一方、一人当たり県民所得では、バブル期は4,139千円、2020年では5,214千円になる。年収倍率でバブル期21倍、最近が22倍とほぼ匹敵しているが、いずれにせよ共稼ぎでも平均ではとても手が届かない水準である。ちなみに野村総研調べでは、金融資産1億円以上の世帯は1485千世帯、合計354兆円に上る。23区の新築マンション供給戸数は12,481戸なので、この層の3割が東京在住だとして30年毎に都区部のマンションで相続対策をするとして、そのポテンシャルは年間30千戸に相当する。価格はこの層の動向次第だと考えられる。

 そこで地価の上昇余地を探るために、バブル期を含めて都心五区の公示地価推移を調べてみた。

といった状況で、かつてのバブル期最高値に比べ、最近は、商業地では37.1%、住宅地でも38.2%という水準である。株価はバブル期越えしたとニュースになっていたが、地価はまだそこまで高騰していない。上昇余地がいまの2.5倍もあるとすると恐ろしい事態である。

 今後の動向は、不動産融資引き締め政策次第のようだ。2015年に相続税の基礎控除額が減額された際に、相続税対策のために不動産投資が加熱した時期があった。このとき全体として空室率が上がって返済が滞ることを恐れ、金融庁の指導で金融機関の審査基準が厳しくなった。2018年のかぼちゃの馬車事件で、不正融資への監査も厳格になっている。また最高裁判所が2022年4月に過度の「タワマン節税」を認めない判決を下し、国税庁がマンションを使った相続税の軽減策の是正を検討している。これらの引き締め策が作用して、地価もバブル期より抑えられていると考えられる。

 したがってもし政権が150万世帯ほどの富裕層の利益を慮って、こうした不動産融資引き締め策を緩和したら、著しい地価高騰をもたらす恐れが拭えない。建設需要が増大して景気対策になる、とか政府は詭弁を持ち出すかもしれない。金融緩和政策が生み出した個人金融資産、今後のインフレ率を2%、金利ゼロだと、5年で10%目減りすることを予想して、現預金から不動産にシフトする可能性もある。