いまはバブル期よりましなのだろうか?

 国民経済計算の数値で1990年と2022年とを比較してみた。

1990年では、総資産7,936兆円 生産資産(除く住宅)793兆円 土地2,478兆円 金融資産4,455兆円(うち株式556兆円) GDP 463兆円

2022年では、総資産12,649兆円 生産資産(除く住宅)1,787兆円 土地1,316兆円 金融資産9,072兆円(うち株式870兆円)  GDP 557兆円

といった違いになる。

 

 1990年に比べると、金融資産が倍に膨れ上がっていることが分かる。株や不動産でみると、2023年の方がかつてのバブル期以上に増大し、土地は高騰しているもののその半分位であることが分かる。生産資産の方は、1990年に比べて現在の方が倍以上、この30年のうちに資本蓄積が進んだとも見える。でも効率ははかばかしくない。生産資産に対するGDPの割合は、1990年 58.4%なのに対し、2022年は31.2%とほぼ半減している。そして総資産に対するGDPの割合は、1990年 5.8%、2022年 4.4%。対資産での経済効率は4分の1ほど低下していることが分かる。

 

 以上から伺えるのは、金融緩和政策と補助金行政の失敗である。これによって生産資本が増大したが、その政策対象は、もともと担保力があり、補助金をとるのが得意な旧来型産業、道路などの公共インフラに偏りがちである。リニア新幹線、民間航空機開発への補助金も従来企業に回る。半導体産業を例にとれば、政策上、高精度・長寿命の産業用逐次処理型に偏向し、ゲームなどの画像処理用並列処理は対象外になる。後者の代表がエヌビディアになったのは象徴的である。こうした結果、資本効率は半減したと推測される。

 そして金融緩和も資金需要をはるかに超過し、その結果、株式を含む金融資産が膨れ上がる。これが国の借金を支える構図で、政府総債務残高が、1990年では292兆円だったところが、2022年には1,449兆円に、と著しく膨張している。この政府債務が、利権絡みの非効率な政府支出に回る。軍事、リニア新幹線、五輪、万博、高規格高速道路などが頭に浮かぶ。そしてインフレ誘導の金融政策になれば、実質的に預金が目減りして国債の利払い・償還が楽になる。一部の利権集団だけが潤い、大多数が自滅する構図である。

 1990年は土地バブルだったが、近年のは政府バブル、利権絡みの政権ではいまの政策に歯止めがかからず、大多数が転落しかねない。