タイやラオスの山岳地帯に暮らす狩猟民族に、ムラブリと言われる人達がいるという。

 狩猟の移動が基本なので、所有という概念はなく、その場ですべてを調達する。獲物は平等に分ける。現在が中心で、暦もいらない。嫌な相手がいれば、我慢も戦闘もなく移動して離れる。目配せだけで、挨拶は不要。

 定住社会では、所有にこだわり、富が偏在する。タイムテーブルに従って行動し、協調と裏切り、紛争が絶えないのとは対照的である。

 森に憩うというのは、狩猟時代に適応した能力が、少しでも取り戻せるからなのかもしれない。所有や義務、組織などから自由になって、目の前の樹木たちのざわめきや動物の気配に没頭する。悟りもそうかな。