名門企業が、ある意味で人をスポイルする面があるとして、スキルを引き出す企業はどんなものだろうか?

 まずは頭に浮かんだのはダスキン。

 ずいぶん昔だが、某メーカーの営業戦略のプロジェクトに携わり、営業が得意先ばかり回っていることが分かった。それでは、とエリア内の潜在顧客を軒並み訪問して、状況や要望を確かめてみよう、とした。そのときに先方のチームメンバーに、すぐに全体感を掴んで段取り、テキパキ調査を進めた方がいらっしゃった。こんな優れた方がいるのか、と驚いていろいろ話しをしたら、学生時代にずっとダスキンでバイトしていたそうだ。新規開業の事務所に真っ先にマットを貸し出すとか習性だとかで、営業の基本スキルとみずからの動機づけを体系的に学んだとのこと。感心させられた。

 それから十数年後だが、あの靴下屋の仕組みを築き上げた方にたまたま出会い、そのマネジメントの工夫を伺ったことがある。商品には見せ筋、育て筋など五種類用意する、単価が安くても単品管理でスピードで勝負する、品質はある地域の分業体制を活かす、とか今も参考にしている。そこで知ったのは、この方もダスキン出身で実際に娘yした仕組みづくりを経験されてきたとのこと。フランチャイズシステムだけに、役立つノウハウや事業モデルを体系化し、現場が学んで収益を上げるように徹底されている。このように事業の仕組みづくりを学べる会社はそうあるものではない。

 ダスキンとともに思いつくのは、当たり前だがリクルート。起業されてビッグビジネスにされたリーダーを、これほど輩出する会社もそうはない。単なる感想だが、つねに前向きで、いろいろな人の話しを聞いてアイデアを展開し、ビル倒しで培った行動力で自ら足を動かして事業を成長されている方々が多くて尊敬する。たぶん採用基準でこうしたオーバーアチーバータイプを選んで、次々と新しい事業に挑む仕組みがリクルートに備わっていたからなのだろう。近年ではキーエンスが興味深い。

 名門企業は放っておいても優秀な人材が集まるから入社後は競争と選抜なのかもしれない。一方、新興企業はたまたまにせよ入社してくれた人材の多くを、一人前になるようにスキルを引き出す仕組みがないとやっていけないからかとも思う。すごいな。