ウェイン・ショーターの訃報。偉大なプレーヤーであり、偉大な作曲家だった。

 マイルス時代、ウェザーリポート時代も偉大だったが、ソロアルバム「ハイライフ」にその音楽性が凝縮されていて、楽しませてくれる。たぶん三つぐらいの調性を同時並行で絡ませる音楽語法を、独自に開発・発展させたのだと思う。なのでドミナントへの道筋が分かる音楽とは違って、独特の浮遊感と終わらない余韻が強く印象に残る。マーカス・ミラーやデヴィット・ギルモアたちもこの揺らめく調性を後追い、先回りしながら、そのずれを楽しませてくれる。つい最近もテイラー・スウィフトのアルバムに参加していて、ちょっとの音数でこの夢幻の世界を立ち上がらせていたのに感銘を受けていたところだった。

 だいぶ前だけれど、井の頭線渋谷駅を降りたときに、このハイライフの曲がBGMでかかっていたことがあった。たぶんいろいろ難問を抱えていた頃だった。でもショーターの音楽を耳にして、生きているというのは予定調和的じゃなくて、様々な伏線が絡み合って解決したようでしないまま、でも豊かに流れるものなんだな、と何か気分が晴れた。まあなるようになる。

 いま天上で、マイルスやザヴィヌルたちとまた夢幻のセッションを繰り広げているだろうな。ほんとにクリエイティブな音楽家だった。合掌