相手が協調するなら自分も協調する、相手が裏切るなら自分も裏切る、というオウム返し戦略が長期的には協調をもたらすと言われる。この協調関係は、相手の行動に関する情報がどこまで確かで共有されているか、によって左右される。意外なことに、不確かで共有されていない方が協調に至るそうだ。

 まず相手の行動を見間違えることもあり、それも自分しか知らない場合。この場合は、相手に協調してもうらぎっても、自分に損得はない条件であれば、協調関係が持続する。

 次に相手の行動履歴は分からないが、仲間うちではその人は裏切らないという評判が立つ場合。このときは、各人は評判を高めた方が有利なので、協調を選択する。こうして仲間うちでは協調が成立する。

 さらに相手の行動を見間違えはあるが、この情報は公にされる場合。この場合は、予め各人の行動選択が決められているという設定であれば、しっぺ返し戦略で協調に至ることが実験的に知られている。監視と懲罰の仕組みである。

 でも相手の行動を見間違えずに公になる場合は、シミュレーションによると、一回でも裏切れば除外されるか、みんなが裏切るか、と非協調的な状態にしか至らないそうだ。監視社会とはこうしたものだろう。

 以上にように、相手の行動が直接は分からない、あるいは見間違えうる、というときは協調関係が成立・維持される。端的に言えば、誤解もあるから寛容になれる、緩い社会ほど協調的である、ということなのかもしれない。考えさせられる。