くまのプーさんは有名だが、イギリスには熊はいない。

 11世紀、ノルマン人が征服して大量の狩猟で絶滅させたという。二千年前にはマツやカンバ、カシなどの森林に覆われた地だったが、ローマ人が穀物を輸入するために伐採・開墾して減少する。11世紀からはノルマン人が狩猟のためにケルト人から森を奪い、その信仰の対象であるカシを伐採し、僧院も開墾に勤しむ。さらに大航海時代に帆船を建造するためにカシの巨木は大量に伐採されて、しまいにはノルウェーの森に手を伸ばす。囲い込み運動で森林は牧草地に変えられる。その結果、グレートブリテン島の森林面積は僅か11%、クマやオオカミなどは絶滅し、生物の多様性は失われた。固有種の数では、イギリス161種、ニュージーランド1823種、日本2277種だそうだ。西ヨーロッパも開墾などで森林は失われた。

 富の蓄積は、植民地支配とともに森林破壊からはじまった。先住民から土地を奪う、一次産品交易のために開墾する、信仰の対象など文化を破壊する、狩猟好きで大型哺乳類に先住民をその対象に加える、といった行動パターンはグレートブリテン島の歴史に根付いたものだった。こうして世界各地を侵略し森林を破壊してきた。くまのプーさんの世界は現実の裏返しなのだった。

 最近は欧米から、SDGsや生物多様性が提唱され、温暖化ガス削減、熱帯雨林伐採抑制などがルール化されてきている。でもアジア、アフリカ、ラテンアメリカの人々からすれば「どの口で言うの?」となるだろう。自分たちは先に環境を破壊して石炭・石油をさんざん燃やしてきて、これからの経済成長を図る地域にそのツケを回して成長にタガを嵌めるのか、自分たちに有利なように勝手にルールを決めるな、と。その意味でも政治的な排出枠を決めるのではなく、負の遺産を反映させた世界全体の炭素税を導入すべきだと思う。日本も欧米追従のままでいいのだろうか?