資本主義は地球環境を破壊し、貧富の格差を広げる、だから成長を抑え、労働を民主化する、従って、私的所有から社会的所有に転換すべきだ。というポスト資本主義の主張が見受けられる。でもこの主張はとても安易だと思う。

 温暖化問題については、外部不経済へのピグー税として炭素税を課すことで解決に向かう。炭素税の税率は一人当たりの国民所得に比例させることで公平性を保つ。

 貧富の格差については、ベーシックインカムを導入するとともに、大人向けに継続教育の機会を提供して能力の向上や職種の転換を促すことだ。余計な保護規制も撤廃する。こうしたことで割りのよくない仕事から割りのいい仕事に希望者が移行して、結果的に職種間の賃金水準は同じ資格であれば同等になる。

 外部不経済を解消する制度を適切に確立し、時代を先取りして継続教育を充実させれば、自ずから成長して何も抑えるまでもない。資産課税制度を適切に導入すれば、成長することで、ベーシックインカムなど富の再分配の財源も増える。

 つまり掲げられた問題は、私的所有に公的な制度を工夫することで解決される。何も私的所有を否定して、社会的所有に転換するまでもない。株式会社、組合、NPOなど、仕事の内容にふさわしい組織形態を工夫すればいいことで、私的所有はいかんと言うのは暴論である。

 以上の議論のように、ポスト資本主義の主張は問題解決としてみると浅薄で筋違いだし、大仰にすぎる。しかもこの主張の先には、国民社会主義労働党つまりナチスのファシズムに至る危険性がある。コロナ対策と称して根拠もなく私権を制限しようと政権や首長が張り切るし、電力や半導体などでも統制経済を好む省庁が目立つこの国で、私的所有の否定を安易に主張するとこれに乗じる恐れもある。あるいは、共産主義国家の破綻を再び招く恐れもある。ポスト資本主義はやっぱり安直だ。