政治とカネという問題はずっと追求されている。甘利金銭授受疑惑のように、違法な取引が注目されるのが一般的だ。ここではそのコスパを調べてみよう。

 まず人々が租税として納めている総額はいくらだろうか? 国税64兆円、地方税41兆円、総額は105兆円に上る。こうした歳入が政治的な裁量によって、歳出に振り向けられる。

 この政治的な裁量に大きく関わるのが、自民党でいえば党員獲得数と政治献金額である。この二つの指標でいい数字を残せば、自民党内でその議員は出世する。また広島での事例のように、追加的に1.5億円が投入されれば、激戦区でも代議士を一人選出されることができる。

 そこで自民党の政治献金総額を調べると、献金の受け皿となる政治資金団体「国民政治協会」に対する企業・団体献金は24億円。これに政党交付金177億円等を加え、合計245億円だと言う。例えば日本医師会の政治団体、日本医師連盟はこの国民政治協会19年4月と12月に1億円づつを献金した。また日本自動車工業会は80百万円、トヨタ64百万円、日産37百万円、本田25百万円と続く。

 その結果、例えば租税特別措置法で、自動車など輸送用機械器具製造業が7年で1.4兆円もの政策減税を受けていた。サービス業は研究開発減税を受けられないように、他の業界は献金も相対的に少なくて、ここまで優遇はされない。また日本医師会は、診療報酬の決定や医師数の調整などで大きな影響力を持っている。電力業界となると計り知れない。

 まとめてみよう。人々の納めた105兆円もの税金の行方が、自民党への政治献金24億円によってこのように大きく左右される。自動車メーカーは、年換算で約2億円の政治献金で2,000億円もの減税を受けたことになる。もちろん政治献金以外にも口利きなど、裏でいろいろな政治的取引と業界保護規制が展開されていることは言うまでもない。それらを勘案したにしても、恐ろしいほどのコスパではないだろうか。

 105兆円を納めた納税者の声よりも、数億円の政治献金をした団体の声が効く、というのは奇怪ではないだろうか? 政治とカネというときに、このコスパの問題にも着目してほしいものだ。