人と人との間、建物と建物の間、といった間に、コモンズが現れる。そしてこうした間があることで、人や建物の性格も決まる。そして仏教説話で「父がいて子どもが生まれるが、子どもがいなければ父とはならない」というように、個体というものも相互関係で成り立っている。個体の性質ばかり見ていても、相互関係は見えてこない。間こそが、個体同士を結びつける場である。

 こうした考え方は、実は仏教哲学で言う「空」の思想に重なる。つまり、個々の実体はない。あるのは、相互作用であって、こうした作用があることで、はじめて個体の意味付けがなされる。といった考え方である。相互作用は、縁起とも呼ばれる。この空の思想と対照的なのが、こうした相互作用を捨象して、個体の性質を突き詰める要素還元的な考え方である。

 こうしてみると、間に着目した考え方やデザインは、空の思想とぴったり重なってくる。私たちの社会は、この空の思想に随分と馴染んでいて、それだけに間のあり方、つまりコモンズとして豊かに生かすことは、人を人として成り立たせる非常に重要な意味を帯びる。