節税方法を駆使して法人税を回避している、としてGAFAが批判されている。でもGAFAだけではない。CRSの調査では、アメリカの実効税率は27.1%なのだが、収益を上げている288社、概ねフォーチュン500に入る大企業は2008-12年の平均で19.4%しか連邦所得税を納めていない。GE、ボーイング、プライスライン、ベライゾンなど26社は、その5年間に全く連保所得税を払っていないそうだ。111社は少なくとも1年間は納税ゼロだった。

 別の民間の調査では、2018年にはフォーチュン500社のうち60社が連邦所得税を全く払っていないことが分かった。リストの中には、アマゾン、GM、グッドイヤー、イーライリリー、IBM、ネットフリックス、プルーデンシャル、セールスフォースといった日本でも知られているグローバル企業の名前も並ぶ。法人所得の合計は790億ドル、その27.1%だったら、214億ドル(2.2兆円)にも上る。もちろん、日本の大企業でも税負担のない企業は少なくない。

 日本の法人税実効税率は、29.7%と言われている。そうすると日本の国家戦略特区とかにグローバル企業を誘致して、という政策があるが、こうした企業はおそらく節税対策を講じて、税率の高い日本で法人税を納めようとはしないだろう。新たなスキルや雇用を生み、その分、個人所得税が増収になるならば、その分はプラスなのだが、単に雇用が国内企業から外資系に移っただけではプラスにはならない。そう考えると、国家戦略特区の財政効果はあまり望めないことが分かる。明らかなのは、建築規制の緩和を受けて、超高層のオフィスビルをつくってこうした誘致企業から賃貸収入を得る大手不動産会社、工事を請け負う建設・設備会社などだろう。

 多くのグローバル企業にとっては、立地する地域には大した思い入れがあるわけではない。そこで上げた利益を税金で公共還元しする。それがまた地元の教育機関や職業訓練校や住環境、生活・文化の充実に向けられる。そしてそ、の企業にとっても優れたスタッフを継続的に採用できる、という長期的な好循環を期待できればいいのだが。このように考えると、海外の企業を誘致するにしても、節税対策に結構な経費を投じられる大手企業を対象とするよりも、これからを期待できるスタートアップや新興企業を対象とした方が望ましい。自治体としても振興策の柱の一つは、こうした企業群に必要なスキルやノウハウを習得するための、高等教育機関や職業訓練校、研修プログラムを先取りして準備しておくことになるだろう。