スケールフリーネットワークの分析で、感染爆発の臨界点が計算されている。ある人との濃厚接触で感染が広がる人数をkとおくと

臨界点の感染者割合=kの平均/(k2の平均-kの平均)

である。この式から分かるように、接触範囲が特に広い人(ハブ)が多いほど感染爆発が起こりやすくなる。

 クルーズ船の状態について聞くところによると、船内の相当数の感染者が医務室まで出歩いていたという。接触範囲が広い分、船内では感染爆発が起こりやすい状況だった。

 タクシーで感染が広がっているとも言われるが、濃厚接触でその相手も多い。都内では、一台当たり一日平均37人の乗客数だそうだ。したがって感染のハブになって、感染爆発の閾値を下げるのも分かる。自分が担当なら、このkを推計し臨界点を求めて現状を把握していくだろう。

 対策はどうだろうか。感染爆発を抑えるのに効果的なのは、こうしたハブに当たる人たちの濃厚接触の機会を失くすことだ。選択的除去と言う。密室で長時間近接して応対する業務を洗い出してみる。タクシー運転手もそうだが、医師・看護師、ホステス、塾教師、トレーナーなどいろいろリストアップされる。こうした人たちから優先的かつ全面的に感染診断を行い、感染していたら自宅待機を義務付けるということだろう。あと感染を受けないように、例えばタクシーであればシュノーケルのような装置で外気のみから吸気するようにする方法も考えられる。

 しかし、この国の厚生行政はこうしたネットワーク科学を生かした方法をとれるのだろうか?