流体力学のフリーソフトがあったので、いろいろ試している。膨大で複雑な計算が裏で動いていると思うが、素人でも簡単に風の流れなどを目で見ることができる。

高層ビルと遮風

 まず試したのが、高層ビルによる風環境の変化。断面では、風に向かった壁面で上昇気流が生じ、ビル屋上まで吹き上がる。その風の勢いはビルを飛び越して、そのままうねりながら斜め下方向に流れる。一方、ビルの背後は、ビルの高さの倍ぐらいのところまで、ほぼ無風状態である。これは暑苦しいな。ときどき上方の風がうねっているうちに一部下りてきて、逆向きに渦をつくる。

延焼遮断帯と火災旋風

 次に、延焼遮断帯を模して、壁状の障害物をふたつ、上、間、下にすこし隙間をとって並べた。街区の外側に大規模な火災が発生して、熱風が押し寄せる状態を当てはめる。そうすると上と下(街区外周の道路)、中(街区内の生活道路)の隙間に風が集まって、風速が倍になって後ろに送られる。特に、中の隙間からの風が一段と速い。でも風は素直に直進しない。そのうちに蛇行しはじめて、壁の後方、壁の長さと同じぐらいの先に、大きな渦ができて勢いを増していく。上下の幹線道路からの風は、その渦の手前に巻き込まれる。そして渦の勢いが増していくと、風速が大きくなり過ぎたのか、プログラムが必ず落ちてしまう。これは、まるで火災旋風が発生するかのようだ。

問題を見て見ぬふり?

 こんな簡単なシミュレーションで、高層ビルによる風害と、延焼遮断帯の背後での火災旋風の発生、といった現象が浮かび上がる。無風領域や渦を見ているうちに、気分が重くなってきた。政策担当者たちにとって、こんな現象はずっと精緻なモデル解析ですでに明らかなのにもかかわらず、どうして高層化による風害、延焼遮断帯のよる火災旋風の発生、といった重大なリスクを見逃して従来の政策を延長・拡大しつづけるのだろうか?