禁断の書 | ほうしの部屋

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 哲学者ドゥルーズのめぼしい書籍をほぼ読破しました。そこで、今度は、文学のキチガイに挑戦しようと思います。

 長編小説で、頭が狂いそうになるものとしては、今まで、トマス・ピンチョンの『重力の虹』とか夢野久作の『ドグラ・マグラ』といったものを読んできましたが、今回は、ついに、禁断の書に挑戦します。ジェイムズ・ジョイスです。

 

 私の英語力では、ジョイスの原書(英語版)を読むのは無理です。そこで、翻訳を読むのですが、これが一筋縄ではいきません。ジョイスが英語や様々な言語(あるいは造語)でやっている言葉遊びや隠喩、換喩、暗号などを、日本語で新たに作り直す必要があります。翻訳者の力量が問われるところです。英語の前衛文学や学術書の翻訳で定評のある柳瀬尚紀と丸谷才一の訳なので、どうにかこうにか読めるものにはなっていると思います。これはもう、ほとんど柳瀬や丸谷の二次創作行為となります。

 柳瀬訳の『フィネガンズ・ウェイク』に至っては、あの大江健三郎が序文を書いて、翻訳を褒めています。それだけ、この作品の翻訳は大事業だったのでしょう。

 

 ジョイスの『ユリシーズ』(全4巻)『フィネガンズ・ウェイク』(全4巻)の文庫本を、アマゾンの古本で購入しました。難解なため売れなかったようで絶版になっている模様です。そのため、古本も新刊本よりも高値をつけていました。

 ジョイスのこの2作に関しては、学生時代から興味がありましたが、迸り出てくるキチガイ言葉の洪水で、読むのをためらってきました。しかし、20世紀文学の金字塔と呼ばれるジョイスの作品を読まないまま死ぬのは悔しいので、このたび、自分に課していた「禁断の書」としての扱いを解禁し、書籍購入に踏み出しました。

 

「川走(せんそう)、イヴとアダム礼盃亭を過ぎ、く寝る岸辺から輪ん曲する湾へ、今(こん)も度失せぬ巡り路を媚行(びこう)に、巡り戻るは栄地四囲委蛇(えいちしいいい)たるホウス城とその周円」……これが『フィネガンズ・ウェイク』の書き出しです。いきなり意味不明の造語のオンパレードです。こんなもの、一語一語にこだわっていたら進めません。そこで、ドゥルーズ読みで会得した「読み飛ばし戦術」を用いることにします。

 

 新型コロナウイルス禍によるステイ・ホーム期間ゆえに、禁断の書に手を出してしまいました。ドゥルーズには殺されなくて済みましたが、今度は、コロナにやられるか、ジョイスにやられるかの勝負です。