ピーター・フォーク死去 | ほうしの部屋

ほうしの部屋

哲学・現代思想・文学・社会批評・美術・映画・音楽・サッカー・軍事


「刑事コロンボ」シリーズで超有名な、ピーター・フォークが死にました。数年前からアルツハイマー病に罹っていたようです。
「刑事コロンボ」は、私が小学生の頃にハマった欧米ドラマの中で、ナンバー・ワンと言えます。他にも「サンダー・バード」「謎の円盤UFO」「大草原の小さな家」「奥さまは魔女」「コンバット」「逃亡者」などなど、色々ありはしますが、「刑事コロンボ」の後番組だった「警部マクロード」(アメリカの大都市を馬に乗って爆走する)にひどく幻滅したことからも、コロンボへの思い入れは強かったと言えます。
 探偵や刑事の小汚い格好といえば、他にも、金田一耕助とか初期の明智小五郎とか思い浮かびますが、コロンボの小汚いヨレヨレのコート(バーバリー?)、ぶっ壊れかかった自家用車(プジョー)などは、逆に、ものすごく格好良く見えたものです。タバコをむやみやたらに吸いまくる姿も格好良かった。ああいう、みっともない主役イメージは、ピーター・フォーク自身が提案したそうです(当初の企画演出サイドからは、ポアロとかホームズみたいに格好良い正装を提案されていたそうです)。
 後に真似して作られた「古畑任三郎」での田村正和と同様、倒叙形式(犯人が最初に判明しているスタイル)の推理ドラマでは、謎解きを行う主人公の刑事(探偵)役の存在感と演技力が全てです。それがなければ、倒叙形式のドラマなんか最後まで観る気になりません。そういう意味で、ピーター・フォークの存在感と演技力は抜群でした。時には、犯人に同情してしまう(「うまくごまかせよ」などと応援したくなる)ほど、わざとらしくネチネチとしつこく食い下がる、観る者さえイライラさせるコロンボの姿は、秀逸でした。
 ピーター・フォークは、意外に、映画にも数多く出演していますが、見つけるたびに、「あ、コロンボだ」と笑ってしまいます。何か、ウルトラマン・シリーズや仮面ライダー・シリーズで有名になった俳優と同じような「新しい応用や挑戦を観る側に制限される」という悲しさが、ピーター・フォークにもありました。ニュー・ジャーマン・シネマの旗手ヴェンダース監督の傑作『ベルリン・天使の詩』で見つけた時も、やはり初めに笑ってしまいました。
 ピーター・フォークは右目が義眼だったそうです(幼少期にガンで摘出手術したため)。演技を観ていても全然わかりませんでした。