建て主様と設計打合せのなかで、環境デザインと家づくりの空間デザインについていろいろな配慮事項が考えられますので、以前につづいて、私たちの考え方について、少しづつお話ししていこうと思います。今日は開口部という窓の配置についてお話しします。前提とする断熱地域区分は以前同様、私の出没するエリアの断熱地域区分の平成11年基準でのⅣ地域とします。
開口部の配置
私たちは普通、掃き出し窓の前には家具は置きません。本を読もうと思えば私たちは明るい窓辺に移動します。つまり、開口部(窓)によって、室内の設えや居住者のアクティビティは規定されるというこになります。また、開口部は光、風の出入り口であり、室内環境の形成に大きく関わるものです。住まいに適切に開口部が配置され、その場所での設えやアクティビティと環境が重ねあわされていることは、住まいが十全に機能するための必要条件といえます。開口部(窓)をいかに配置するかは、住宅設計のエッセンスとなります。
方 位
まず、方位と日射の取得、採光の関係についてですが、南面の開口部からは直射光が入り、熱も取り入れやすくなります。開口部のたさに応じた出寸法の水平庇を設ければ、比較的容易に季節に応じた日射の制御が可能です。東西面の開口部は、1年を通じて入射角度が低くなるため、夏季のみ遮蔽するといった季節に応じたコントロールが難しくなります。夕陽や朝陽が眺められるといった面はあるものの、まぶしく感じられる場面も多いです。特に南西面の開口部配置は、夏季の温熱環境に対して大きな影響を与えるので慎重に考えなければなりません。北面の開口部は、冬場に窓から日射を直接室内に取り込んで、床、壁などに蓄熱させて暖房効果を得ようという方式のダイレクトゲインは期待できませんが、反射光や天空光によって安定した光環境につなげられます。リフレクターとなる受照面を外側に設けておくことも考えられます。隣接建物の壁面や、相対する斜面の樹木で光を受けるという発想もあるといえます。
■夏至の直達日射量の変化
平面位置・断面位置
開口部の配置にあたっては、大型テレビ、ソファやベッドなど、想定される大型家具・家電との位置関係をよく考えておく必要があります。コストのかかったせっかくの開口部が、家具でふさがれているようでは、設計時の配慮不足といわれても仕方がありません。光環境という面から見ると、ハイサイドライトで天井面を明るくしたり、入り隅部のスリットで壁を照らしたり、開口部と光を受ける面をきちんと関係づけることで、輝度対比の少ない柔らかな光で満ちた空間を実現することができます。
通風という面からみると、開口部は室の対角に設けるのがよいです。断面的にも地窓+高窓のように高さを違えることで、室全体に空気が行き渡りやすくなります。ただし、高所への開口部の設置は清掃や開閉方式への配慮が求められます。
開閉式のトップライトを利用して、天井近くにたまった暖気を上部から排出するのも効果的です。トップライトは、建築基準法上壁面に設けられた開口部の3倍の採光面積が規定されていることからわかるように、多くの光量を期待できます。周囲が建て込んだ敷地条件では、有効な採光手法となります。また、印象的な光の状態となり、さまざまな空間演出もできます。一方で、夏の暑熱、冬のコールドドラフト・結露などのリスクは増えてしまいます。ガラスのスペックの確保はもちろんのこととして、直射光があたりにくい場所に設けるなど、設置位置にも慎重さが求められます。また、夏季の換気に用いるにはトップライトといえども網戸が必須となります。網戸がなければ、開けられることのない開口となってしまいます。しかし、その清掃方法もあわせて考えなければいけません。
■開口の断面位置
周囲の障害物
現実に開口部の配置を考えるにあたっては、眺望や日照との関係で決まることも多いですが、周辺の障害物との位置関係も十分検討しなければなりません。隣家の壁面が迫っていれば、採光、通風とも妨げられます。往来や隣家からのプライバシーの侵害が懸念されれば、カーテン閉めきられて開口としての機能を果たさないこととなってしまいます。さらに、見過ごされがちですが、開口部と設備機器との位置関係にも留意する必要があります。駆動音や排気が開口部を通じて室内に入ってくるおそれがあります。窓を開けたところで、隣の室外機の排熱やトイレの排気を取り込んでしまうというような事態は避けなければなりません。
■開口の平面位置