住宅の天井の高さや寸法について #1
理想的な天井高はどの程度か?
お施主様との設計打ち合わせで高さや寸法についての議題がでてまいります。
家を設計するにあたり建て主が一番気にされること、それは平面プラン。これからの暮らしがそこにすべて投影されるわけだから当然であります。まずは各部屋の配置と各々の位置関係が気になり、その次に部屋の広さも大いに興味の対象になります。
建て主もここまでは設計と共通言語で話を進めていけますが、つぎに高さ関係の領域になると話はかなり難しくなってきます。
建て主は今まで高さ寸法なるものを意識して暮らしたことのない方がほとんどでいらっしゃいます。比較の対象は今住んでいる家か、ハウスメーカー・量産型住宅のモデルハウスになってしまう。この難しい高さ寸法の決定をプロたる建築家・設計者・建築会社に任せられるかどうかとなります。
それは機能性や合理性だけでは語れない、空間から導き出される暮らしの心地よさに大きく影響を与えることになります。
世間での「一般的な天井高」というものが曲者(くせもの)で、何を持って一般的というかによって変わってきます。
量産型住宅の天井高は今は240cm天井が多いようです。かつては、天井高を競って高くした時代もありました。
しかし、余計に階高を高くするとデメリットも出てきます。
① 余計に階段数が増えて、生活するうえでも不便になる。
② 空気の容積が増えるので、温熱環境の質を向上させるにはより多くのエネルギーが必要となり不利である。
こうした合理的な理由から、天井高競争は下火になって行って、あまり話題になってきていない気がします。
高さの根拠とは?
建築基準法では、居室の天井高さが2100㎜以上と定められている以外は「高さ」に関する規定はそれほど多くありません。
「建築家」の世界では標準的な天井高は量産型住宅の天井よりも低いものがいいということが当たり前になっております。
それでは天井の高さはどのように決められていくのでしょうか。
もう少し考察してまいります。
だれもが認める20世紀建築における最大の巨人ル・コルビュジエが、独特の寸法体系の「モデュロール」という人体に則した寸法システムを考案し、その寸法体系の「モデュロール」に沿って1951年にル・コルビュジエの‶終の栖″
となった休憩小屋という広さ3.66×3.66メートル、高さ2.26メートルの極小サイズの家を建てています。
基準となるのは身長6フィート(183センチ)、臍(へそ)までの高さが113センチの人間。その人が腕を上に伸ばしたときの高さ2.26メートルが、1部屋の基準寸法と定義されました。この休憩小屋の高さがまさにそうです。
小屋自体の大きさだけでなく、正方形の小さな窓の寸法、ベッドや机の位置など隅から隅まで「モデュロール」にのっとって追求した居心地のよさ。この休憩小屋は、胎内空間のようなものではなかったかと言われています。
多くの建築家・設計者は、部屋や各部位の高さを決定する根拠として、機能や製品の規格寸法、建築資材の歩留まり、そして感覚的な空間性や温熱環境などの複合的な要因をあげます。
既製品のサッシの最大寸法が2200mmで、天井下地に建具枠寸法の27mmが加わり、そこから天井の石膏ボード9.5mmが引かれた寸法2100㎜か2200㎜をLDKの天井高の標準とする。そうすると、開口部の上に小壁ができることが無く、視界が広がり光が回ります。
また、室内側の建具も(例えばセットとなる障子にしろ) 高さが増すほどに問題が起きやすくなる。ぎりぎり2200mmまでであればなんとかなる。といわれています。
「建築家」の方々は、勾配天井や吹き抜けなどの高めの天井と、低めの天井とを対比させ空間に魅力を作ろうと心がけます。
自然と、天井高は225cmというケースが多く以上のような様々な観点から、天井は225cmで抑えておくというのには合理性があります。・・・・・・ 次回へつづく