東京農工大と日本小動物獣医師会の調査によると、日本でペットとして飼われている犬と猫の平均寿命が過去最高になった。
平成26年現在、犬13・2歳、猫11・9歳である。
過去25年間で、犬は1・5倍、猫は2・3倍に延びた。
ワクチン接種の普及などにより感染症対策が進んだことが主たる理由である。
また、屋内で飼われるなど、生活環境がよくなったことも影響しており、猫のワクチン接種率が低いことを見ても、寿命はまだ延びる可能性が高いという。
昔は犬を飼い、今は猫を飼っている小生の実感としては、屋内飼育という環境の変化はもちろんだが、何よりも食べる餌の質が上がり、薬や医療が進歩したことが寿命を延ばしていると思う。
人間が高齢化しているパターンとまったく同じである。
犬は血統によって寿命に顕著な違いがあり、猫は雄雌で違う。
ちなみに、犬の純血種は12・8歳、雑種は14・2歳。
猫の雄は11歳、雌は12・9歳。
いろいろと考えさせられるデータではある。
また、ペットのご葬儀やご供養をしている者の実感としては、この調査から約2年を経過している現在、寿命はきっとさらに大きく伸びていると思う。
犬の15歳や猫の13歳は当たり前といった感じである。
Aさんは大型犬を居間の真ん中で飼い、ついに寝たきりになったので、床ずれしないよう、不眠不休の介護をして送った。
もう一匹は認知症になったのか、夜と昼の生活が入れ替わってしまったので、それに合わせて餌やりなどをしているうちに、自分が体調を崩してしまった。
Bさんは、立派な高齢者で病気も抱えているが、「歳とった猫たちを全員送るまではあの世に行けません」と明るく笑う。
Cさんは、捨てられる犬たちへ手を差し伸べているうちに使命感が募り、ついに支援組織を作って生涯をかけることにした。
ところで、人間もペットも長寿は結構だが、遠からず、大きな転換点を向かえることだろう。
科学技術が進み、生活レベルが上がる一方で、人間の格差が各方面で広がり、進歩の恩恵にあずかれない人々が続出し、それに伴って哀れなペットたちも増えるに違いない。
所得や学歴だけでなく、医療や食事といった面でも凄まじい勢いで格差が広がりつつあり、それはすでに世代間で受け継がれ始めている。
富裕層に飼われる高級なペットたちはますます長生きし、一般庶民に飼われるペットたちの寿命は近々に頭打ちとなり、やがては捨てられ、殺される者が続出するだろう。
かつて、当山で生まれた仔猫たちを欲しい方々へお届けした時、飼われる環境の違いを痛感させられた。
人間の呻きを慰めるペットたちは、人間の生活レベルの範囲内でしか生きられないのだ。
Cさんたちの〈善意の連帯〉にも限度があろう。
ペットの長寿を手放しで喜べないのは、団塊の世代が長寿を手放しで喜べないのと同じである。
高度成長時代の貯えを持った世代が去り、次の世代が遺産を消費し、あるいは国際資本に奪われた先はどうなるか?
生々流転のこの世では、あらゆるものが〈満つれば欠ける〉運命を逃れられない。
犬の13・2歳は、人間ならばおよそ69歳、猫の11・9歳は、人間ならばおよそ64歳だとされる。
それはもっと延びるかも知れないが、一般人の生活向上は、すでにピークを過ぎた。
冒頭の調査が行われた平成26年、年収300万円以下の人口はついに全給与所得者の4割を占めた。
国家の豊かさを示すGDP(国内総生産)は世界第3位なのに、OECD(経済協力開発機構)の調査による貧困率において世界第4位である。
ここ数年で就職率は上がったが、可処分所得は下がっている。
国民の大部分が安い給与で使われる仕組みは着々と進行している。
犬や猫の寿命は延びた。
しかし、人間の生活そのものの質はどうか?
テレビの画面には千円以上のラーメンや、五百万円以上の高級車などが紹介されているものの、多くの庶民には無縁だ。
別の画面のお笑いで慰められつつ日々を送る間に、日夜、いっときの休みもなく格差は拡大し続けている。
それはきっと、犬や猫の未来にも暗雲となることだろう。
多くの国民が犬や猫と一緒に安心して長寿を喜べる社会になって欲しいと、心から願う。
原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
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「おん ばざら たらま きりく」※今日の守本尊千手観音様の真言です。
どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
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