
京都大学総合人間学部教授カール・ベッカー 博士によると、アメリカには、遺族 カウンセリング を行う病院があるという。
「末期 患者が亡くなるであろう二、三ヶ月前から、家族、そして医療従事者、患者の世話をするチーム、看護婦や医者、そしてだいたいにおいてはハワイでしたらお坊さん、本土でしたら神父、牧師などを呼んで一、二時間くらいティーパーティーをひらきます。
お菓子を出して、場合によってはビールとか酒も出します。」(以下『日本人の死生観』より)
驚いた。
医者が何かを告げるといった目的ではなく、患者の話を聴くのはもちろん、集まった人たちが「お互いに話せるような場」を目ざす。
もちろん、祈りたい雰囲気になったなら、一緒に祈ることもある。
数回、開催するうちに本人は他界するが、その後も毎月、数回は「雑談」を続けることが理想とされている。
そうすると「不思議なこと」がわかる。
「遺族 カウンセリング をやった場合、遺族 がほかの一般の人と同じような比率で健康でいられるのに対して、一般の、遺族 カウンセリング をもたない遺族 は、死なれて一、二年もたたないうちに突然死、急病、精神異常、自殺未遂等々、悪運をずっと引きずります。」
これはかなりきつい表現だと思うが、家族の死をどう受けとめ、咀嚼(ソシャク)するかはその人その人によるとは言え、「遺族 カウンセリング のある方が健康にいい」と事実を突きつけられてしまえば、唸るしかない。
しかも、この事実は広く知られ、アメリカでは郡や町の単位でティーパーティー代を負担する制度すらつくられている。
せいぜい十数万円ではあるが、医師や牧師などに時間をとらせ、クッキーなどを用意すればそれなりの実費は要する。
その経費と、遺族の運命の重さとを比べ、「みんなのほうから出しましょうということになる」そうだ。
さらに博士は指摘する。
「私がこの話を日本人に語るというのはいささか滑稽に思えませんか。
だって、日本ではお坊さんがずっとそういう作業をしてきたのですから。
昔のお坊さんは、死なれてからだけではなくて、患者が危ない、最期ではないかと思う時点から家庭に出入りし始めて、そして死なれてから何度も、四十九日、一周忌、等々、宗派によって微妙に違いますが、そこでお経を唱えるだけでなくて、みんなが話し合える、悩みを聞き合えるという場を設けて、いわば祟りを無事に抜けてきたのです。 これが日本人の知恵だったのです。」
一昔前までは、生前にお墓を建てることや、万が一の際の準備をすることは「縁起でもない」と避けられていたが、今はむしろ、先に逝く本人が、ご葬儀 の準備すら〈自分の責任〉と考えるのが一般的になりつつある。
事実、当山には、たくさんのご家族がお揃いで相談に来られる。
もういくばくもないと宣告されている方を目の前にして、息子さんが「おやじ、これから二人とも高校進学で大変なんだから、お墓はそんなに立派なの造れないよ」と言い、父親が「じゃあ、お墓代は俺と母さんが何とかしよう。お前は永代供養料と年間管理料を払って、孫の教育のためにも墓を守って行けよ」などとざっくばらんに話し、衆議一決する場合もある。
もちろん、送る立場の奥さんが一人で来られ、こっそり、ご夫婦の分、共同墓 の契約をして「これで安心です」と穏やかな顔で帰られたりもする。
また、四十九日の日取りをご相談に来られ、お墓のことで親族間のズレが生じていると悩みを打ち明けるご遺族もおられる。
四十九日、百か日、一周忌、三回忌と続く一連の供養は決して形式的な慣習ではない。
薬師如来、観音菩薩、勢至菩薩、阿弥陀如来という異なる役割を持つご本尊様方に導かれ、あの世の御霊が安心の世界へと向かうのみでなく、供養するこの世の人びとも又、悼み、慰め、祈るまことを尽くしつつ、それぞれの心なりに身内の死を受けとめ、知らぬ間に心を深める貴重な機会である。
何か、〈聴いて欲しい〉ことがあったなら、遠慮なく人生相談を申し込んでください。
アメリカにはアメリカなりのスタイル、日本には日本なりのスタイルがあります。
博士が「ずっとそういう作業をしてきた」と言うとおり、当山は人生相談を寺院の中心的役割と位置づけ、歴史的使命を果たさせていただきたいと願っています。
原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
般若心経の音声はこちらから どうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらから どうぞ。
「おん さん ざん ざん さく そわか」※今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8
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