仙台市の名門ホシヤマ珈琲
店の本社は仙台市青葉区一番町にある。
ビルの階段を登ると、上質でゆったりした時間の流れるコーヒーショップが待っている。
どこか故郷のイメージに似た懐かしさに包まれながら、席へ案内された。
キリマンジャロを注文し、同時に、前社長星山慈良
氏の著書『やり尽くす。
』を受け取りにきましたと告げる。
そつのない対応をするのはすべて男性店員だ。
ほどなく、コーヒーと本がやってきて、白い紙へ受領のサインを求められた。
限定出版の本は無料贈呈だが、漫画家荒木飛呂彦氏のイラストが好意で掲載されている関係上、売りに出さないことを約束させられた。
コーヒーを一口いただき、申し分のない香りと味を確認してから透明のビニール袋に包まれた本をおしいただき、数ページ読んだ。
まもなく、静けさと温かさがほどよい店を後にした。
星山慈良
氏の母親星山マサ氏が昭和49年に始めたコーヒーショップ「ニューエレガンス」は建物の老朽化に伴い。平成27年10月12日、41年に及ぶ役割を終えている。
星山慈良
氏は平成26年7月、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、「できうるうちにこれまでの事柄を中心に書き留めることにした。」のである。
54才9ヶ月を迎えた氏は突然、「晴天の霹靂」のように病名を告知された。
「そこから、自分の世界が一変した。
しばらくの間は現実性がなかった。」
ALSをテーマにしたテレビ番組に「最後は目も見えなくなり完全に閉じ込められる」とテロップが流れた時は「絶句」した。
「この病気の本質が見えたような気がした。」
かねて、「喫茶業(喫茶店)とは、珈琲の提供販売と、場(空間)の提供の二つの業態が組み合わさっているもの」と考えてきた氏は、公私の整理を始めた。
親子二代、心血を注いできたコーヒー店の歴史を記すことは、その一環である。
氏は書く。
「これからどんなに時代が進み世の中がデジタル化されても人と人が出会い、直接語り合う場所は不可欠である。
恐らく、街の本質的役割はその場をどれだけ時代の感覚にあわせて提供できるかにあると思う。
その場(空間)をしっかり演出していきたい。」
これまで、外国でも店舗を展開する一方、「ニューエレガンス」が存続の危機に立たされるたび、なくなると「困る人がいる」し、「他のお店では代わりができないと言っていただける」ので、頑張ってきた。
いつも「お店の最も大切な価値、存在理由」を考え、「世の中で必要とされる会社、店であること」を目ざしてやってきた。
氏は、晴天の霹靂から約1年かけて本書を完成させた。
「私自身、生に対する未練も執着も今はまだない。
ただ、この病気は人としての機能の100の内99を失う。
1残された事を酷と思うか、ありがたいと思うか。
この事だけは、会社の為、家族の為ではなく自分自身が〝生きたい〟と思ったときだけ付けると決めている。
いずれにせよ、生がある限り精一杯生きる。
私自身に価値のある存在理由を求めて。」
会社を後進へ譲った氏は今、どうしておられるかわからない。
氏はこれまで店の存在理由を突き詰める一方、〈社会や家族のための自分〉の存在理由も同時に追い求めて来られたことだろう。
そして最後はご自身そのものの問題となった。
小生も現在、〈ご縁の方々のための自分〉に没頭しているつもりではあるが、最後は自分の問題になるのだろうか。
かつて娑婆にいた頃、幾度か「ニューエレガンス」のお世話になった。
焼き鳥屋やバーなど小さな店が肩を寄せ合って並ぶその界隈はすっかり変わった。
何もかもが移り行く無常の中で、氏は最後に「可能性を見つめて、そして、やり尽くす。
」と覚悟を述べられた。
本を閉じ、目も閉じると、かつてあった「ニューエレガンス」と、最近訪ねた「ホシヤマ珈琲
本店」の光景が代わる代わる瞼に浮かんだ。
あの41年間はもはや、幻でしかない。
――小生の41年も……。
しかし、あの店は確かに生きている。
ホシヤマイズム「お客様にしあわせを感じていただくために、最善を尽くす」が活き活きと息づいている。
やり尽くしてきた人の意志が生きている。
ホシヤマ珈琲
店に、永遠なれと祈りたい。
原発事故の早期終息のため、復興へのご加護のため、般若心経の祈りを続けましょう。
般若心経の音声はこちらから
どうぞ。(祈願の太鼓が入っています)
お聴きいただくには 音楽再生ソフトが必要です。お持ちでない方は無料でWindows Media Player がダウンロードできます。こちらから
どうぞ。
「おん さんまや さとばん」※今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0
[投票のご協力をお願いします。合掌]




