ようやく花の季節となりました。花を目にしたお大師 様は「過因(カイン…過去の原因)の詩」を詠まれました。

「いうことなかれ、この華は今年ひらくと
 まさに知るべし、往く年に種因をくだすと
 因縁 、相感じ、枝幹そびえる
 いかにいわんや、近日、早春 にあうをや」

(この花は、今年、突然に咲いたと考え、言ってはならない
 去った年に種を蒔いた原因があればこそ、今、咲いたのだと思い至らねばならない
 種という原因と、それを育てた縁によって枝も幹も立派になった 
 ましてや、この頃の早春 の陽差しあってこそ咲いたのである)

 お大師 様は、さらに「現果(ゲンカ…現在の結果)の詩」をも詠まれました。

「青陽ひとたび御苑の中を照らし、梅花衆に先んじてひらく
 春風ひとたび起こって馨香(ケイコウ…香り)あまねし
 華萼(カガク…花とガク)相かがやきて天宮を照らす」

(春の陽光がひとたび内裏の御苑を照らせば、梅の花が他の花々に先んじて開く
 春風がひとたび吹けば、芳香は広く拡がり、
 梅花たちはそれぞれ輝き、天人の宮殿を照らす)

 お大師 様は、人々が花をめでる中でひとり、深く因果応報 の真実を受け止めておられました。
 開き、薫る花にも、吹き渡る風にも、樹々のざわめきにも、笑い顔にも泣き顔にも大日如来の説法を見聞きする密教行者の面目躍如といったところです。
 因果応報 を信じられなければ、道徳も倫理も、もちろん宗教も成り立ちません。
 ものごとの原因を考え、行動の結果を期待すればこそ、より良き方向をめざす具体的な努力が可能になるのではないでしょうか。

 仏法は、①原因と結果の連鎖がとぎれないこと、②あらゆるものは変化の相にあって無常 なこと、③無常 なものに不変の実体はないこと、そして、④こうした理を深く納得し、〈ままならぬつかの間の生を生きている〉者同士が互いを思いやりながら生きるところに救いがあることを教えの柱にしています。
 私たち仏法を心の柱とし、生きる羅針盤ともする者は、本を読んだ時や、誰かと話をしている時や、お詣りをした時に「そうか」と思うだけでなく、森羅万象に教えの真理が顕れていることに気づきつつ生きたいものです。
 さて、お大師 様は「現世荘厳( ゲンセショウゴン)」と説かれました。
 極楽は山の彼方の空遠く、あるいは、逃れ行くあの世にあるのではないのです。
「煩悩の迷いによってこの世は地獄界にも修羅界にもなっているのであり、迷いを脱し、自他のためを思う大欲 (タイヨク)によって皆が生きるようになれば、この世はこの上なく美しく荘厳された極楽であるという真実が明らかになる」
 この世を厭い、あの世や来世を頼むことなく、今、ここで人の道を自分なりに精一杯歩めば、自分が救われるだけでなく、この世全体が極楽ともなります。




 さて、自然発生的に生まれた当山の護持ゆかり人 」が、居宅のない住職夫婦のために、せめてお風呂場を作ろうと呼びかけてくださった「お風呂場建築基金」は、すばらしい結果となりました。
 善き心の方々が真の布施の心で行動を起こし、賛同した方々もまた、真の布施の心で寺院がよりしっかりしたものとなるよう、大きな力を授けてくださいました。
 まことにありがたく、また、寺院を預かる者として誇りにも思います。
 月刊「ゆかり人 」3月号に掲載された事務局よりのご報告を転載します。

ゆかり人 事務局より】水澤春彦
 日当たりの悪い私の庭の福寿草もようやく咲き始めました。
 皆様お元気でお過ごしの事と思います。
「お風呂場建築基金」について 計(石井さん)と事務局(鈴木さん)で集計作業を進めております。
 2月25日現在で、162名の方からご協力いただき、計209万円となっております。
 多数のご縁の皆様の御協力を得て、しかも短期間にほぼ目標に近い金額に至っていることに感銘を受けております。
 皆様方のお気持の広がりと深さに何か圧倒されるような思いです。
 御寄付の締め日は2月末となっておりますが、郵送日数等の関係もあり、3月上旬頃には最終集計できると思います。
 3月12日に役員 が開かれます。この日をスタートとして、建築する場合どのようなかたちにするのか、 長副 長始め役員全員が知恵をしぼって、御住職と相談しながら、なるべく早めに最終的なものを皆様にお知らせしたいと考えております。
 ついでながら、「ゆかり人 (法楽寺護持 )」の年 費3000円のうち1200円は法楽新聞(2月から「月刊ゆかり人 」)の発行代及び郵送料となります。
 残1800百円でそれ以外の年間活動を行っております。
 きびしい財政状況ではありますが、極力必要なものにしぼって使用する様にしております。
 なおかつ残金が出る様な場合、活動に支障が生じない範囲で法楽寺に寄進することとなります。
 現在法楽寺は講堂で使用する椅子の数が不足しております。
 又、大分前の役員 でも意見が出ていたのですが、墓参り等の時使用する水汲み場の整備等色々ありますが、その様な必要なものに寄進して行きたいと考えております。


〈まごころ〉

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