2月9日、NHK文化講座「生活仏法 」において受講者の皆さんと対話を行いました。
 教材はDVD『チベットの風 』です。
 発祥の地インドにおいてイスラム教勢力が仏教を滅ぼす間際まで、最も精緻に構築された最後の仏教である密教 はチベットへ伝えられ続け、チベットの人々は、仏教を学ぶために整えたチベット語でそれを学び伝えてきました。
 密教 には中国から日本へ渡った流れと、チベットで成熟した流れと、二つの系統があります。
 日本では真言 宗と、天台宗の一部が千年の時を超えて守り発展させています。
 しかし、チベットではその存在が許されず、半世紀にわたって寺院が破壊され僧侶が殺されてきただけでなく、仏教を根幹としたチベット人の生活 そのものが抹殺されようとしています。
 映像は雄弁です。
 このDVDは、私たちへほとんど知らされていない恐ろしい現実を突きつけます。
 ぜひ、たくさんの人に観ていただきたいと願っています。

 さて、文化大革命によって破壊された仏教はチベットを除き、改革・解放政策の中で復活した面もあります。
 2月5日付の河北新報は、「時空超え僧の魂交流 真言 宗のルーツ」と題した特集を掲載しました。

 お大師様へ密教 のすべてを伝授した直後、「日本で広めよ。私は生まれ変わってお前の弟子になろう」と言った青竜寺恵果 和尚は遷化し、日本で即身成仏(ソクシンジョウブツ)法 が確立した一方、中国における密教は845年の仏教弾圧によって破壊され尽くしました。
 しかし、昭和59年、廃れていた青竜寺 の跡地に「恵果 ・空海記念堂」が建てられ、平成9年に記念堂は青竜寺 となり、住職の寛旭 (カンギョク40才)師が再建を進めてきました。
 今回、来日した寛旭 師は信徒5人と共に、高野山へ参詣し、お大師様が日本へ伝えた『理趣経』を読誦しました。

「空海、恵果 が日中仏教徒の友好交流をお守りくださるよう、青竜寺 が一日も早く完全復興できるよう心から祈りました」。
「来る度に空海の偉大さを感じる。
 彼は短期間で唐代の密教 を学びとった。
 書や道教、土木技術にも通じた天才だ」。


 記事は、「経済成長に伴って、寺への寄進や参拝者も増えた。仏教研究も盛んになり、今は『仏教ブーム』とさえ言われる」と書いています。
 寛旭 師。

「急激な経済成長により、物質生活 は豊かになったが、精神生活 が追いつかない。
 人生はむなしいと感じて宗教に救いを求める人が増えた」。 
「自分自身と人生の大切さを知ることだ。
 仏に帰依すれば、心は愉快になり、煩悩は減り、仕事への活力もわく。
 信仰で人々の生活 を良くし、精神面を豊かにしたい」。
「唐代に密教 寺院だった青竜寺 と大興善寺を拠点に密教 を復活させたい」。
「3年後には九重塔建設などすべての復興計画を完成させたい。密教 道場もつくり、僧侶を日本へ留学させて密教 を還流させたい」。


 昨年の中国漁船による衝突事故に際し起こった反日デモなどについては……。

「問題を解決するのは政治家の仕事だが、日中の国民が交流を深め、互いに理解をし合えば、矛盾は大きくならないでしょう」。

 ダライ・ラマ 法王は、DVD『チベットの風 』で指摘されました。

「チベットを守るための中国へのアプローチには二つの道がある。
 一つは政府との交渉、一つは中国の民衆との相互理解である」。

 まことに、賢者は道筋を見極めておられます。

 あまねく分けへだてなく人々を救う仏法 が、人々を対立させ傷つけるものを克服させてくださるよう祈り続けます。

〈河北新報掲載の写真〉

龍のブログ-河北新報の記事より