このページは、機関誌『法楽』作りに参加された皆さんと一緒に、中国へ伝わった最初の仏教経典とされている『四十二章経』を学ぶ過程を綴っています。
 毎回、一章づつ、3年半かけて学び通す予定です。

 仏(ホトケ)の言(ノタマ)わく、
『人の道(ドウ)を為(ナ)すは、たとえば一人(イチニン)と萬人(マンニン)と戦うに、鉀(コウ…鎧)を被(カム)り、兵(ヒョウ)を操(アヤツ)り、門を出でて戦わんと欲(ホッ)するに、意(ココロ)怯(コ)にして膽(タン)弱きものは、すなわち自ら退走(タイソウ)し、或(アル)ものは半道(ハンドウ)にして還(カエ)り、或(アル)ものは格闘して死し、或(アル)ものは大勝(タイショウ)を得て還(カエ)り、国高く遷(ウツ)るがごとし。
 夫(ソ)れ人、能(ヨ)く牢(カタ)くその心を持(タモ)ち、精鋭進行(ショウエイシンギョウ)して、流俗(ルゾク…世俗)狂愚(オウグ…愚者)の言(ゴン)に惑わずんば、欲滅し、悪盡(ツ)き、必ず道を得ん』。


釈尊は説かれました。

「仏道を成就するとは以下のようなことである。
 武将が鎧兜をまとって大軍と闘おうと部下を指揮して城からうって出る際、気の弱い者は闘わずして逃げ、ある者は途中から引き返し、ある者は戦死し、しかし、ある者は大勝利を得て国中へ武勲をとどろかすように、心構え一つで結果は天と地の違いになるのである。
 仏道を成就しようとするならば、決心を固めて揺るがず、精進努力して、世俗の世迷い言に惑わず進めば、我欲は滅し、悪しき行いから離れ、必ず成果を得られるであろう」

 目的を達成するためには、意志を強固にして進まねばなりません。
 怠けさせたり、脇道へそれさせるたりするような言動にひきずられてはなりません。
 ちょうど、「お風呂場建築基金」のためにパッチワークの作品を提供してくださった伊藤さんも、この経典を勉強する説法の場におられたので、善行の実践における心構えと、実践者をめぐる周囲の人々の心に起こる波紋についてお話ししました。

 他人の善行に接した時、さまざまな思いが起こります。
 ある人はすなおに誉め、自分も何かできることを行おうとすることでしょう。
 ある人はやっかみ、嫉妬し、「この人はじぶんだけ良い子になろうとしている」、「自分だけ目立とうとしている」などと思うことでしょう。
 ある人は妨害するかも知れません。
 もちろん、正しい対処法は、すなおに徳を誉め、善行を讃え、自分も善行を行うことです。

 ところで、心を円満に向上させる道が5つあります。
 他人へは「優しく」し、自分へは「厳しく」し、社会的には「正しく」行動し、心に「優雅さや穏やかさといった大らかな」心を持ち、仏神などの尊いものを「尊ぶ」ことです。
 この4番目の道を達成するには、5つの方法があり、私たちは日々、その誓願文を唱えています。

①我、有徳者(ウトクシャ)を尊敬(ソンギョウ)し、優雅さに生きん
②我、善行者を讃嘆(サンタン)し、優雅さに生きん
③我、善行に随順し、優雅さに生きん
④我、勝義心(ショウギシン)を持ち、優雅さに生きん
⑤我、菩提心(ボダイシン)を捨てず、優雅さに生きん

 人徳のある人、智慧のある人、布施行を実践する人をすなおに尊敬しましょう。
 他人の善行をすなおに誉めましょう。
 他人の善行を見聞きしたならば、自分も手伝い、できることを行いましょう。
 自分の未熟さを忘れず、「これで良い」、「これだけで良い」と勝手に終着点を決めることなく、他人の善行に触発されて「よし、自分も」と奮い立つ向上心を忘れないようにしましょう。
 自他の幸せのために自分を清め、迷いを脱し、仏性を発揮する心を捨てないようにしましょう。

 他人からどう思われようと、何を言われようと、伊藤さんには強い気持で善行を続けていただき、善行に接する方々には、自分の「優雅さや穏やかさといった大らかな心」はどうなっているかを検証する機会と受け止めていただけるよう願ってやみません。


〈パッチワークの美〉

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