1月18日付の河北新報は、「前大統領親族の搭乗拒否」と題して、モハメド・ベン・キアリ機長の行動を紹介した。

 大統領が家族と共に国外へ亡命し、混乱の続くチュニジアでチュニス航空のコックピットを守る機長は、フランスのリヨンへ向けて飛び立とうと指令を待っていた14日午後、緊急連絡を受けた。
 5人の乗客を追加で搭乗させよという。
 名前を読んだ機長は、亡命した前大統領の親族と察し、命令を拒否して離陸した。
「拒否することが、どほど危険か分かっていた。
 でも治安部隊が若者に発砲している映像が、とっさに頭に浮かんだ。
 犯罪者の逃亡には荷担しないと決めた」。
 欲15日、チュニスへ戻った機長は報道陣に囲まれ、事実を知った乗客らに勇喜を讃えられたという。
 出国できなかった5人は拘束されているとみられる。


 政治的行動には常に賛否がつきまとう。
 きっとチュニジアでも評価は分かれていることだろう。
 しかし、「治安部隊が若者に発砲している映像」を思い浮かべ、発砲を命じたであろう側の関係者が逃亡することに荷担すべきでないという魂の声に従い、自分や家族の身の安全を二の次にして行動した勇喜は高評価に値する。
 もしも5人を搭乗させたからといって誰に非難されるわけでもなく、帰国時の身の安全は保証されていてまったく危険性はなかったにもかかわらず、状況次第では帰国後に非難されたり、あるいはただちに逮捕されてもおかしくないような〈たった一人の決断〉を行ったことは、とてつもなく重い。
 5人の取り調べは、これまで続いた政治の解明と新たな国家作りに大きく役立つことだろう。



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