和同開珎の中にその製作や文字の雰囲気から「古和同と新和同の中間」に位置すると思われるものが存在し、収集界では古くからこれらを隷開和同と分類(「開」の文字が新和同と同じく隷書体になる特徴が着目された結果)してきました。
①古和同(銅/銀あり)
②隷開和同(銅/銀あり)
③新和同(銅のみ)
この隷開和同を古和同と見るか新和同と見るか、はたまた上記のように隷開和同という大分類を立て、都合3期に分けるかについてはいろいろと見解もあったかとは思いますが、現在では隷開和同にも銅/銀の2種があることから、これを古和同の一類として考えるのが主流となっているようです。
ちなみに、銭幣館主・田中啓文先生はこの隷開和同の銀銭こそ「708年発行の我が国初の官鋳銭」と考えておられ、和同3期説の立場だったようです(その他の古和同についてはあまりにバラツキが多いことから、主にそれ以前の私鋳銭と位置付けられたようです)。
各地の発掘現場の出土例等、いろいろと新事実の判明しつつある今日では少々異質な説と映ってしまうかもしれませんが、限られた現物から推測するしかなかった時代では理に適った説でもありました。
もっとも、現在においても収集家の多くが依然として一枚一枚の現物を見ての判断しかできない環境にあることを考えると、これはこれで一理ある見解と思わざるを得ないほど優れた考察でもあったのです。
さて、新和同と隷開和同について、古い泉書には「区別が難しい」と書いてあったりもしますが、辛辣な言葉を使うなら、この区別に躓くようでは古銭の収集/分類には向いていないのでしょう(新寛永の文銭で「島屋文」と言われる名品を理解できないのと同義かと思います)。
余談ながら、かつて自分は古銭より切手の方に興味があり、少しばかり手を染めた時期もありましたが、次第にその資質がないと思うに至りそちらは断念した経緯があります。
これは好き嫌いの問題ではなく、センスのなさだけはどうしようもないと悟ったことによるものです・・・・・・
隷開和同/古和同
次に、隷開和同と古和同についてですが、古和同には前期銭と思われる狭穿類と後期銭と思われる広穿類が存在します。
基本的に前期銭は重く後期銭は軽量(銀銭において)となりますが、これは貨幣というものの概念を民に浸透させる手段として「世界各国のあらゆる時代」において行われていたことでもあったようです。
ここでは隷開和同に時期が近いと思われる古和同後期銭(広穿類)の銅銭を取り上げてみますが、この古和同(広穿)は隷開和同とその書風が近似し、まるで隷開和同を濶縁小字化したような雰囲気を漂わせるものです。
ところで、この隷開和同と古和同(広穿)について、その時代差を自信を持って判断できる方が一体どれくらいおられるでしょうか(少なくとも自分には無理と感じます・・・・・・)?
というのも、多くの古泉家の頭には「細縁銭を初鋳とし濶縁銭を次鋳とする」という不文律が刷り込まれており、杓子定規にこれを当て嵌めるなら、隷開和同よりむしろ古和同(広穿)の方が後鋳という判断すら出てしまうかもしれません・・・・・・
古泉界の伝統(先輩方からの教え)を大切に引き継ぎつつも慣習(過去の分類)にとらわれず、目の前にある一つ一つを見極めながら矛盾点をなくしてゆく努力を怠ってはならないと改めて感ずる思いです。
最後に、少しばかり表題(隷開和同の位置付けの議論)からは外れるかもしれませんが、古くから「古和同の銅銭は(全て)銀銭の母銭である」という意見もあったようです。
銅銀が自分の手許に揃うのはこの隷開和同しかない(※隷開和同を古和同の一類と見做した場合)のですが、とりあえずこの2品のそれぞれが母子に相当するものか否か、一度皆様の目でご判断をいただきたいと思います。
※私自身も隷開和同を古和同の一類と考える人間で、現時点においては古和同(銀銭)を重量別に前期と後期の2期に分け、後期に隷開和同を組み込むと分かりやすくなるのでは(分類名となっていた「開」の書風に引っ張られ、これを古和同と新和同の中間などとするのではなく・・・・・・)、という考えを持っています。
①古和同前期(狭穿類)
②古和同後期(広穿類/隷開和同を含む)
③新和同
形の上では啓文先生の和同3期説を少々アレンジ?したような考え方(ただ、古和同の多くを私鋳銭とする見解には賛同しかねます)となるのかもしれませんが、もちろん世にある和同開珎がこのような形にきれいに収まるものばかりではないことも理解していますし、全く別の意見をお持ちの方も多々おられると思います。
異なる意見は自分の凝り固まった頭(考え)に新たな光をもたらしてくれるかもしれず、むしろそういったご意見こそ伺ってみたいと思っております。
こちらは銀座コイン社の創業50周年、並びに銀座コインオークション30周年を記念した『蒐集の極』(平成30年11月3日発行)への寄稿文に一部(今回はかなり・・・・・・)手を加えたものとなります。


