先日「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」に参戦するために東京に行ってきました。せっかく東京に来たので、前から気になっていた東京都現代美術館に寄りました。
開催されていた展覧会がすごく感じるものがあって、美術館熱が高まっていたときに本書が目に入って購入しました。
本書の構成は主に3つ。①展覧会ができるまで、②学芸員の仕事、③美術館の楽しみ方。
それぞれの項目ごとに面白かった点をいくつか紹介します。
①展覧会ができるまで
一つの美術館でも様々な展覧会が行われますよね。そこで展示されている作品ってどうやって調達されているんでしょう。
…はい、全然考えたことなかったですね。展覧会に行っても作品そのものしか見てなくて、その作品はどこから来たのかなんて考えたことありませんでした。
その作品を所有する美術館に交渉して貸してもらうそうです。
しかも金銭は発生せず、基本的にタダ!マジか!
そして、いざ借りるとなるとヤマトや日通の専門部署がトラックで運ぶそうなんですが、そこに学芸員さんも作品のコンディションチェックと護送のために同乗するとのこと。
遠方に出向いたときなんかは長時間ドライバーの隣に座っているんでしょうから、ロマンスが発生しそうだなと変に妄想してしまいました。すみません。
さて、いざお借りしてきた作品などの展示が完了し、展覧会がスタートしても学芸員さんは安心できません。
作品は晒されたままですから、地震等で損傷する可能性があるから安眠できないとのことです。これは確かに分かる気がします。
②学芸員の仕事
学芸員さんの仕事は博物館法で定義されています。主に資料収集、調査研究、保管、展示です。
美術館の規模が小さくなるほど、経理や広報といった事務仕事もこなさないといけないようです。
保管と展示。保管が作品を守る行為であるのとは反対に、展示は作品にダメージを与える行為ですから、両立が難しそうです。
展示する際に気をつけるのは温湿度と照度。
作品の素材によって最適な数字が異なるとのこと。照度について言えば、光は紫外線や赤外線が含まれているので、光を与えることはダメージを与えることと同義だということです。
日本画はかなりデリケートなようで、そういえば、展覧会で観るときは大抵薄暗い部屋で仄かな照明が当たっているイメージがありますが、そういうことだったんですね。
ちなみに、各フロアにいらっしゃる監視員さんは学芸員ではないと。
………え?
…いや、たまに大学生くらいの若い方が多く立っているようなときは、美術系か文学系の学生さんの研修かなと思ったりすることはありましたが、そもそも学芸員さんは立たないとは。
でも、皆さんの脳内の監視員さんって、知的で少しミステリアスな女性の方だったりしません?学芸員のイメージぴったりなんだよなー
と、少し恥ずかしくなったところですが、この本では監視員さんの事情は述べられていません。監視員さんについても色々知りたいところです。担当フロアの作品を堪能したりしているのか、監視していてヒヤッとした瞬間、とか。
③美術館の楽しみ方
最初に現代アートについて話されています。モネやピカソに比べて現代アートが分からないのは、まだ技法や美術史としての価値を論理的に説明できるほど作品理解が進んでいないからだと。
そこで、作者が提示する現代アートの楽しみ方は、①感情の揺らぎに身を任せる、②分からない状態を楽しむ、です。
これ、分かります。私は西洋画や日本画より現代アートが好きなんですが、最初は訳が分からなくて距離を取っていました。
でも、「自分なりに解釈して楽しめばいい」という考え方を何かの本で読んでから、ハードルがグッと下がりました。
今は、むしろ、意味が分からないからこそ、個々人の自由な想像力で楽しむことができるアートだと思うようになりました。
次に、美術館の廻り方です。企画展の中に入ると、入り口に企画展自体のコンセプトについて説明が書かれたボードが貼られていて、同様に各コーナーの入り口にも設置してありますよね。あれ、ちゃんと読む方ですか?
私は読みます…が、著者は推奨されていません。文章を考えるのは学芸員さんなので、読んでほしい気持ちはもちろんあるんだけど、最初から一つ一つ丁寧に向き合うと、後半まで集中力が持たないと。
確かに。後半は歩みを止めずにザッと作品を一瞥して退場している私です。
それを防ぐためには、まずはサッと会場を一周してみて、興味のあるエリアを集中的に観る、これで満足感は随分変わるとのことです。やってみよう。
長々と書いてしまいました。紹介した内容に留まらず、展示会ができるまでの裏話や、みんなに美術館を楽しんでもらうための理想と現実に悩む話など、まだまだ盛り沢山な内容です。本著を読んだ後には、美術作品だけでなく美術館自体も好きになること間違いなしです!