”貸間あり”
久しぶりにとらやに戻った寅さんは
自分の部屋が貸し出され
大ショック。
「俺の心の拠り所をどうしてくれる。
もうお前の帰る場所はないよと
言うようなもんじゃねぇか」
へそを曲げて出て行った。
妹さくらは軒先にぶらさがった木札を
指先でチョンと突く。
(あ~ぁ、やっぱりお兄ちゃん拗ねたか。
寝泊りできる部屋は他にもあるのに
わけも聞かずに出ていくなんて…)
実は、さくらの持ち家を応援しようと
叔父夫婦の提案だったのだ。
幸せになりたいけど
シリーズ9作目は
寅さんが金沢で知り合った
お嬢さんとのエピソードです。
吉永小百合さん演じる歌子ちゃんが
「自分だけ幸せになって
いいのか」
と悩むお話。
好きな人の元へ飛び込みたいけど
父1人を残して遠く離れた土地へ
嫁入りするのは気がひける。
諦めてしまおうか?
でも…
小津安二郎監督作品を思い出すような
結婚という人生の大きな転期を
前に揺れ動く乙女心。
さくらさん夫婦が相談役になり、
彼女の背中を押す
しみじみとした良い回ですよ。
レビューを2つにわけますね![]()
心のシェルター
寅さんにとっての安息所は
とらや。
故郷が恋しくなって立ち寄ると
「おつかれさま」の優しい言葉、
温かいお風呂、お銚子とご飯。
出迎えてくれる気のいい人々と
冗談言ったり、喧嘩したりして
心が癒されたら、再び旅へでる。
マドンナにとっての安息所は
寅さん。
人生に迷った時、
羽を休める止まり木のような場所。
たくさん笑いと元気をもらい、
心が決まれば、再び飛び立っていく。
すねてむくれて甘える寅次郎
団子屋のおいちゃんおばちゃんが
さくら夫婦の持ち家のために
貸間をして資金を協力することにした。
ところが、事情を知ったところで
寅さんの腹の虫は収まらない。
憎まれ口を叩きます。
「俺に相談もなく決めたのが気にいらない」
さくらさんは言い返します。
「じゃぁ、相談したいとき
どこに連絡したらいいの?
お兄ちゃんはどこにいるの?」
妹の鋭い指摘に黙る寅さん。
「だいだい、お前たちが家を持つなんか
10年早い。生意気なんだよ。
どーせ壁は薄くて、床が抜ける代物さ」
博さん(さくらの夫)がうなだれる。
「そりゃあんまりな言い方ですよ」
茶の間がしんみりした空気に。
ついに、
さくらさんは気持ちをぶつけます。
「悪いことしたお金で
大きな立派な家に住んでる人もいる。
だけど、私たちは真面目に一生懸命
働いたお金を5年かけて溜めたの。
それでも足りなくて
方々に頭を下げて借りたのよ。
お兄ちゃんがいう安普請だとしても
自分の家を持てることが私は嬉しいの。
お兄ちゃん、
どうして言ってくれないの?
”さくら、がんばれよって…”」
ハンカチで涙をぬぐう妹。
上目づかいでみる兄。
さっきまでの勢いがしぼみ、
肩を落として店をでていきます。
このさくらさんのセリフは
今作のマドンナの心情と同じ。
「どうしてお父さんは
私の結婚を
素直に喜んでくれないの?
応援してくれないの?」
2人の女性の切実さが重なる
見事な脚本です![]()
彼女たちの願いに、
男性陣はどう応えるのでしょうか?
さくらさんの伴侶、博さんが
活躍しますよ。
②歌子ちゃん(吉永小百合)編へつづく
別館でも映画について触れています↓



























