「アンタにはあげまんの相がある。

俺は死ぬ前にもう一勝負したい。

俺のところに来ないか?  

アンタのがほしいんだ。

どうやら支店長も同じらしい。

もし、この娘をってくれたら

銀行に3億あずけてもいい」

老いた投資家は銀行員ナヨコが気に入り

銀行支店長に持ちかけた。

ナヨコが不安げに支店長を見つめると

彼はキッパリ告げる。

「貴方に勝ち目はありません。

なぜなら貴方は彼女のがほしい。

私は彼女自身がほしい」

その瞬間、幸運の女神は微笑んだ。

 

あげまん

伊丹十三監督

1990年

宮本信子 津川雅彦

大滝秀治 金田龍之介

一の宮あつ子 菅井きん

洞口頼子 黒田福美

橋爪功 押坂忍

東野英治郎 宝田明

北村和夫 石井苗子

再鑑賞したくて探していた今作。

最近、通いはじめた

レンタルビデオ店で発見びっくり

ヤッター!!

 

レビューを2つにわけます鉛筆

 

ナヨコ役は宮本信子さん。

半玉秘書芸者へと成熟する役で

舞、三味線、立ち居振る舞いが絶品!

出世を天秤にかける男女

彼らを取り巻く野心家たちの

様々な思惑が交錯する

痛快娯楽エンターティメントです。

 

あげまんって何?

私の理想の女性

あげまんナヨコちゃんです。

※ナヨコという名前の由来は映画をみてね。

 

男を成功に導く福の神

男性が彼女を大事にしているうちは

意欲活力がみなぎり

チャンスが転がり込んでくる。

 

しかし、彼女を粗末にした途端

運気は下がりツキに見放されます。

 

秘書を務めるナヨコは

経済的なゆとりはあるが、

生きる張り合いがほしい。

彼女にとっての張り合いとは

パートナーが何かに挑戦するのを

サポートすることに喜びを感じます。

 

「マルサの女」亮子ちゃんのような

男をバッタバッタと斬るタイプではなく

 

 

男の甘えや見栄っ張りを

しなやかに受け流す人

 

素直で従順な彼女は、

危なっかしく見えるけど

騙され裏切られても前を向く

 

気持ちを切り替える強さがあり、

相手の未熟さも含めて

包み込む女性です。

 

感想

 

「あなたが私を大事にさえ

していてくれたら…」

 

ナヨコは主水に浮気され、別れを決意。

投資家の元へ身を寄せ、置屋を立ち上げる。

芸者ナヨ吉となり、店は大繁盛。

ある晩、宴会で2人が再会すると

芸者姿のナヨコにうっとりする主水。

朱塗りの鳥居のトンネルをくぐる

夜の場面が風情があって素敵です。

「よりを戻さないか」と持ちかける主水。

主水の煙草を一服。

そして、答える。

「あなたに傷つけられて

血だらけになった心。

傷は治ったけどみたいに固くなったの。

もう何があっても傷つかない。

寄りを戻すには遅すぎたわ…」

をこらえながら

むりに笑顔をつくって

揺れる気持ちをふりきり

くるっと彼に背を向ける。

パン!パン!柏手を打ち

「商売繁盛!あなたの分もね

彼の幸運を願い、手を合わせます。

 

可愛さと粋が合わさったナヨコに、

主水もこの表情。

やがて、総理の座を狙う

政治家(宝田明)から言い寄られます。

スマートにあしらおうとするが

 

「主水が破滅するネタがあるぞ。

知りたければホテルの部屋まで

弁当を届けろ」

 

主水の一大事と聞いたからには

捨ててはおけない。

 

別れても裏切られても

やっぱり彼のことが好きだから。

 

ナヨコはホテルの入口で、主水と遭遇。

「これから私、犬飼先生のところへ

お弁当届けにいくの。

私、行くわよ?とめないのね?

引き留めてほしい女心ですねぇ。

主水は強がって

「ボクは他人の色恋に

干渉しない主義でね」

素直になれない男と女(≧∇≦)

 

「部屋に入れば手籠めにされるかも。

いやいや、投資家のお父さんが

同行する約束だから大丈夫だわ」

 

ナヨコは自分に言い聞かせる。

 

 

ところが!

 

いつまでたっても投資家はこない。

 

ナヨコは政治家に売られたのだ。

 

一方、

主水はナヨコの身が心配になってくる。

 

ウェディングドレスを試着する

婚約者を前に、気もそぞろ。

ブライダルサロンから抜け出し

政治家の部屋へ電話。

呼び出しても、電話に出ない。

居てもたってもいられず、

エレベーターに乗り込む。

 

が…

 

一足おそかった。

操を奪われたナヨコは

犬飼が押し付けた札束まみれ。

着物の襟元に一万円

ぴらっとのぞいて惨めな姿に。

事情を知らない主水は

カーッと頭に血がのぼる。

金目当てで体を売ったのか!

彼女の襟元から1万円をぬきとり

握りしめた札束をぶつける。

お札がヒラヒラ舞うなか、

ナヨコは何も言い返せず、泣きじゃくる。

主水のために、身体をはって

情報を手に入れたことを

一切打ち明けません。

救おうとした主水にめられ、

味方だった投資家に裏切られ、

政治家に凌辱されるという

身も心もボロボロ状態に。

このシーン、切ないですねぇ。

じれったいやら、ヤキモキするやら。

 

でも、こういう場面があるから

 

「あいつらにギャフンと言わしたれ!」

と、彼女に感情移入できる。

 

クライマックスの逆転劇

盛り上がるんですよねウインク

 

 

②ダメンズ編へつづく