怪しい。
脱税臭がぷんぷん匂う。
おかっぱ頭に眼鏡、
そばかすほっぺの亮子ちゃん。
警察犬のように鼻が利く女査察官は、
激しい雨の中、
気の遠くなる大量のゴミの山に突入!
なりふり構わず黒い袋を破っていく。
「あった!あった!」
お宝を発掘して大笑い。
 

 

 
マルサの女
伊丹十三監督
1987年
宮本信子 山崎努
津川雅彦 大滝秀治
小林桂樹

久しぶりに伊丹十三監督の映画が見たくて

レンタルビデオ店へ。再鑑賞です(*^^*)
なんという豪華なキャスト陣!
あぁ可笑しい
ほろっと感動もあったりね。
日本アカデミー賞最優秀作品賞
脚本賞・監督賞

主人公を演じる宮本信子さんが、
やっぱり素晴らしいんですよねぇ。
スーツの男たちに混じって
寝ぐせ頭で肩を並べて歩く。
男性顔負けの観察眼を持ち、
冷静な頭脳派でありながら、
不器用な可愛らしさがキュート。
ヤクザに囲まれ鞄をぎゅっと抱きしめ
ビビリながらも粘る
めちゃめちゃ魅力たっぷりなヒロイン。
彼女の素顔を一瞬で描写する、
シナリオに鳥肌
 
「冷蔵庫のシューマイ、
チンして食べるのよ。
できるわよ、
ダイちゃんもう5歳なんだから。
白いメモリを5にあわせるのよ」
 
暗い職場のパソコンに向かいながら、
留守番している一人息子に電話してるんです。
企業のデータを目で追いながら。
 
たったこれだけで、
彼女がシングルマザーだと、わかります。

 

  感想

この仕事、

ナメられたらおしまいだよ。

警察犬のように宝物を掘り当てる彼ら。
冷血となじられようとも、
国家の犬めと罵倒されてもひるまない
低姿勢で近づき、ドアの隙間から、
ぐいっと足をさしこむ。
靴を踏まれることを予測して、
工場の安全靴で守りを固める。
チェーンカッターで鎖を切り、
相手の陣地へ侵攻!
 

必死で脱税する人々
コミカルな浅ましさ♡
恐れ入るほどの貪欲さに
圧倒されますよ。
証書、証文、金庫のカギ、通帳、
ハンコを隠せ!隠しぬけ!
ブラジャー子供のランドセル
枕、口紅ケース、急須へ隠せ。
証拠のメモを噛んで飲み込め!
裏金作りの名人 VS 国税局査察官
軽妙なやりとりに目が離せません。
権藤社長(山崎努)は
亮子ちゃんを見るなり気が緩む。
「な~んだ、の査察官か」
「どういう意味ですかっ!」
女なんてチョロイもんだ
侮っている権藤社長。
煙にまくつもりだったのに
突き進む亮子ちゃんを見直していく
2人は天敵だけど
どこか通じるものがあるんです。
赤ちゃんを見つめる目は同じ。
ささやかな家庭の幸せを求めながらも
汚れた世界で生きていく
内偵調査を重ね、
ついにガサ入れという名の戦争へ!
 
ところが権藤社長と長男が
まさかの父子喧嘩に!
 
「こんな大金どうしたんだ?
お前、、盗んだのか?」
 
平手打ちがとぶ。
 
息子にはマジメで誠実であってほしい。
としての本気の顔。

 

 
2人を見守りながらオロオロする亮子ちゃん。
どうしよう、どうしよう。
 
飛び出していく息子を追いかけようとする父親。
 
「権藤さん、私が連れ戻してきます!」
 
ガサ入れ中だけど、
彼の息子を追いかけ飛び出していく。
 
息子くんが踏切に立ってる!
 
電車がやってくる。
 
必死で名前を呼ぶ亮子ちゃん。
 
全力で走る、走る
 
そして・・・
 
「息子さんのことを考えるんなら
財産残すより貴方の
逞しさ、そのものを残すほうが良いわ」

権藤社長はじっと彼女を見つめる。
 
見覚えのある花柄のハンカチをとりだした。
 
 
「はっ」として見つめる亮子ちゃん。
 
社長は無言で 男の(みそぎ)を
ハンカチに記す。
 
それを無言で受け取り、握りしめる彼女。
 
夕陽に照らされた街を見下ろす、マルサの女。
 

かっこいい結末にしびれました♡