フランケンシュタイン

作者が君だって?

本当にこの小説を君が書いたのか?

誰かに手伝ってもらったんだろ?

18歳の女が単独で創作できるはずない。

第一、若い娘に似合わない題材だ。

夫の名前出版してはどうだ?


女をバカにする出版業界へ

メアリーは反論する。

「女に深刻な話が書けないとでも?

女は喪失、死、裏切りを知らないとでも?

性別ではなく作品の内容で

判断しなさいよ

博士のモデルは夫

博士から孤独を与えられたフランケンは私

自分たちのことを書いたのに、

なぜ裏切った夫が本の権利を得るの?

手柄を横取りするの?


 

 

 

メアリーの総て

ハイファ・アル=マンスール監督脚本

2017年

エル・ファニング

ダグラス・ブース

ベル・パウリー

 

ベストセラー小説の誕生秘話です。

原題は「メアリー・シェリー」

旧姓のゴドウィンではなく

夫の姓シェリーです。

察しの良い人は結末がお解りですね?

を感じる素敵なラストです照れ

「マディソン郡の橋」で

メリル・ストリープが語りました。

”女というものは

常に選択をせまられる。

結婚、出産…正しいか間違いか、

わからない。

でもんできたから今の私がある”

 

今作のエル・ファニングも

同じことを言います。

”選んだ道の結果がどうあれ、

私の選択私をつくった。後悔していないわ”

 

愛の苦しみほど、

人を成長させるものは…ないのです。

 

  感想

自由に生きる者は

その結果から目をそらすな。

 

メアリーの母は出産で亡くなった。

母の温もりを感じる唯一の墓地

墓石に刻まれた母の名前を指でなぞり

文字を覚え、文学少女へと成長した。

 

女流作家だった母

自由思想の持主だった。

 

結婚の枠に囚われない生き方を貫き、

女性の権利取得にむけて闘った人。

その情熱を受け継いだメアリーは

新進気鋭の詩人パーシーと出逢い

初デートは母の墓前。

妻子のいる彼との駆け落ちを決めたのも

母の墓の前だった。

世間の噂、家の評判、結婚制度、

息苦しい常識から解放されたい。

自由に生きたい!

尊敬する父の反対を押し切ってでも

自分が選んだ人だから。

信じて生きるんだ。

ところが、駆け落ちを理由に

パーシーは裕福な実家から勘当され

無一文に。

 

借金を重ねながら

夢やロマン、理想論を語り、

詩人たちとの交友に明け暮れます。

一方、メアリーは妊娠し

目の前の現実に目を向けはじめます。

一方、パーシーは現実が怖くなり

逃げ出したくなる。

彼は自由恋愛という名目を掲げ、

妊娠、出産、育児、家計、生活という

自分の責任から目をそらしたい。

 

「既存の結婚形式にこだわらず

自由恋愛で生きたい。

君も他の男とつきあえよ。

そのかわり、

僕の自由恋愛にも

口を出さないでくれ。

束縛はやめてほしい。

君のことも好きだけど、

他の人とつきあってもいいだろう?」

 

メアリーは情けなくなる。

猛烈な怒りがわきあがり

「大勢の男ではなく

たった一人を愛するという

私の自由を認めてほしい」

ほどなく、赤ん坊クララが産まれ

初めて味わう小さな命を腕に抱き

幸せをかみしめるメアリー。

しかし、

夫が作った借金の取り立てから

逃げるため無理やり乳児を抱えて

冬の寒い土砂降りの雨の中を

走り、赤ん坊は死亡。

パーシーの本妻ハリエットも

夫に捨てられたことに絶望し

テムズ川に身投げして亡くなる。

メアリーの異母妹もまた

信じていた男に裏切られる。

女性たちの苦しみを代弁したい。

そして、彼女の心の中で、

失った命に蘇ってほしいという

思いが強くなっていく。

科学の力は

死者を蘇らせることができるのか?

自身の体験から生まれた、

自分だけの表現

親に捨てられたモンスターの

孤独な苦しみと復讐心を

小説にしたためる。

小説「フランケンシュタイン」は

科学者が死者に命を与えるだけ与えて

いざ怪物が蘇ると、

その責任をとることが怖くなり、

逃げ出し、怪物を孤独にさせた話。

もしも、

博士が自分の生んだ子に

愛情を注いでいたら…

どうなっていただろうか?

 

本は匿名で出版することになるが

世間はパーシーが原作者だと噂する。

しかし、本屋を営むだけは

娘が書いた小説だと見抜き

出版記念パーティを開く。

参加者の拍手に迎えられ、

パーシーが挨拶をはじめます。

 

はたして

パーシーは博士のままでいるのか?

それとも

怪物が伸ばした手を握り返すのか?

彼のスピーチは本編でお聞きくださいね。

 

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