恐怖が暴走すると善意を破壊する。

円盤がワシントンに着陸。

宇宙人が何かを差し出そうとした次の瞬間!

怯えた兵士が銃を発砲==@

腕を撃たれたはずみでカプセルは地面に落ち

壊れてしまった。

宇宙人が残念そうにつぶやく。

”これは大統領への贈り物。

他の惑星の植物(生命)を

学ぶチャンスだったのにな”

それでも尚、宇宙人は怖がり屋の人間に

最大限の配慮を試みるのだった。

 

地球の静止する日

ロバート・ワイズ監督

1951年

マイケル・レニー

パトリシア・ニール

(画像お借りしました)

 

名作ってCGに頼らなくても良いんだなぁ照れ

SFパニックムービーというと、

冷たい映像、荒涼とした風景が思い浮かぶけど

今作は温もりを感じます花

社会派で上品な台詞知的ですよグッ

人々が脅えるシーンでは怪奇映画の音楽が🎵

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督「メッセージ」では

恐怖に駆られた若い警備兵が

宇宙人を傷つけるシーンがあります。

今作も同じ。

宇宙人のメッセージを女性が橋渡しする点でも

両作品には共通点があります。興味深いラブ

 

 

感想

一番こわいのは、

恐怖で理性を失うこと。

 

地球にやってきた宇宙人クラトゥの台詞です。

彼は平和のメッセンジャー。

宇宙にとって地球人は迷惑な存在

 

惑星ごと処分しようか?

 

いやまて。

まず人間とはいかなる生物か知りたい。

 

このくだりは

手塚治虫の漫画『W3 ワンダースリー』を思い出します。

下宿屋へ潜入しよう。

そこに暮らす人々は

ワシントンが世界の中心だと思っている人、

マスコミの情報操作におどらされる人、

富と名声に目がくらむ人、

宇宙人に対して友好的な人。

バラバラの考えを持っている。

う~む、これは厄介だぞ。

マトモに話が通じる相手を見つけねば!

 

宇宙人が少年と街歩きする名場面が

特に印象に残ります。

 

戦没者墓地へ宇宙人を連れて行くボビー少年。

「父さんは戦争で亡くなったんだよ」

父親の墓石の前で帽子をとる少年。

 

宇宙人の表情が驚きから憂いの顔に変わる。

 

兵士として死んだ人がこんなに。

 

「ボビー、

私の住んでいるところには戦争がない。

だからこのような場所はないのだ」

 

「戦争がない?それは良いね」

 

つづいて、リンカーン記念館へ。

 

人民が平和に暮らせる政治を目指した

リンカーンの考え方に共感し、

「こういう偉大な人と話がしたい。

どこに行けば会えるだろう?」

哲学者や思想家、科学者は賢いけれど、

政府によって発言黙殺されることが多い。

首脳陣を集めたいが仲が悪い国もある。

結束させるには一筋縄でいかない。

そもそも

人間はパニックを持つ生き物。

強すぎる衝撃で混乱してしまう動物だ。

 

こわいから現実を受け入れずに

目をそらしてしまう人もいる。

 

ほんと、そうですねキョロキョロ

どんなに科学が進んでも、

私達の脳に備わった不安という機能。

ゼロにはできない。

 

普段、冷静で穏やかな人でも

不安で判断力がにぶってしまいます。

 

オレオレ詐欺に引っかかるのも、

コロナ陰謀論を信じこむのも、

「この食べ物が危ない」など

恐怖を煽る謳い文句に騙されるのも、

得体のしれない不安のせい。

 

早急に安心を手に入れたくて

誤った判断をすることがある

 

この映画の宇宙人はみます。

 

地球を滅ぼそうとしている人間に

自覚を促したい

 

人を傷つけずに警告したい。

彼がとった手段とは…

 

そして、彼は現実を直視できる人物に

希望を託そうとします。

 

それは、少年ボビーの母親ヘレン。

彼女は恐怖を感じながら

ロボット兵器に一歩ずつ近づいていく。

 

ココロの中で

恐怖と理性の天秤がゆれる。

 

暗がりからロボットがやってくる。

イスを倒しながら、迫ってくる。

後ずさりをするヘレン。

叫び声をあげ、壁に倒れ込む。

しかし・・・気を取り直す。

 

一呼吸おく。

ロボットをじっと見据え、

ゆっくりと口をひらくのだった。

ラストは、シンプルだけど

心に刺さるメッセージが見事です。

”地球の諸君、

2つの選択からえらぶのは君たちだ。

平和に暮らすのか、滅亡の道をたどるのか?

我々は諸君の答えを待っている